木ノ下歌舞伎「三人吉三廓初買」東京芸術劇場 プレイハウス

東京芸術劇場 プレイハウスで木ノ下歌舞伎「三人吉三廓初買」を拝見しました。歌舞伎では上演されない文里と花魁一重の恋も描かれ、順番を変えつつも全場上演。上演時間が休憩45分含み5時間20分というのを1週間前に知り驚きました。

配役
和尚吉三/小林の朝比奈/乞食一:田中俊介
お坊吉三/閻魔大王/乞食二:須賀健太
お嬢吉三/丁子屋新造花巻/乞食三:坂口涼太郎
丁子屋花魁一重/夜鷹おはぜ/鬼四:藤野涼子
木屋手代十三郎/丁子屋の若い者喜助/鬼一:小日向星一
伝吉娘おとせ/浪人狸穴の金太/鬼二:深沢萌華
八百屋久兵衛/浪人鷲の森の熊蔵/丁子屋主人長兵衛/鬼三:武谷公雄
丁子屋花魁吉野/夜鷹おいぼ/捕手三:高山のえみ
おしづ弟与吉/丁子屋花魁九重/五官王/捕手二:山口航太
文蔵倅鉄之助/金貸太郎右衛門/浪人蛇山の長次/丁子屋遣手おつめ/堂守源次坊/厄払い/鬼五:武居卓
釜屋武兵衛/医師山井養仙/素帝王/捕手一:田中佑弥
丁子屋新造花琴/夜鷹おてふ/鬼六/捕手四:緑川史絵
土左衛門伝吉/賽の河原の地蔵:川平慈英
文里女房おしづ/紫式部/松金屋女中:緒川たまき
木屋文蔵(文里)/長沼六郎:眞島秀和

「湯島天神境内の場」で厄払いが怪しげなお札を一朱で販売しており、その場にまだ互いを知らない三人の吉三。三人の衣装は黒に赤のアクセントで、歌舞伎と違いお揃いな感じ。衣装はシンプルな着物、モダンな着物風、時代を先取りしたスーツなどの現代服も入り混じりますが、そこは木ノ下歌舞伎なので気にならず。庚申丸と百両の流れがよくわかる第一幕。こんな狭い範囲で百両がぐるぐる回っているのが凄過ぎる。何か少しでも歯車がずれていれば万事解決したであろうに、すれ違いが切ない。名場面の「大川端庚申塚の場」の名台詞を歌で代用しているのも良いく、古語と現代語(主に若者)が混じり合いつつもテンポよく、笑いも交えて展開されるため時間の長さは気にならない。第二幕最初の「地獄正月斎日の場」、初演が安政七年 (1860) 正月興行ということで和尚吉三が朝比奈を演じる曽我物のパロディで、ほぼ忠実に再現されているという。相撲は「鴛鴦襖恋睦」か、地獄じゃん拳で地蔵の川平慈英さん若者に劣らず動けているのが凄い。「巣鴨在吉祥院の場」「巣鴨在吉祥院の場」を含む怒涛の第三幕、文理と一重、おしづの話と三人吉三の話が緩く絡みますが、そのさり気なさのため話が混乱せずに良く、舞台の上下、奥行きをしっかり使った展開が効果的。「丁子屋別荘の場」は部屋の入れ替わり方など冗長に感じましたが、我慢できる範囲。お嬢吉三が叩く火事太鼓の音からの「蛍の光」は長く物語を見た後だけにグッときました。舞台中央のプラカードは「TOKYO」から「EDO」、最後は空白に。歌舞伎を見ても思いますが、三人の吉三がどこかで生きていてくれたらと思うばかり。役者の皆様も何役もこなされており頭が下がる。知らない方がほとんどでしたが、緒川たまきさんがお綺麗。伝吉娘おとせ役の深沢萌華さんもはっきりしたお声とビブラートの効いた芝居らしい芝居が素敵。そして、河竹黙阿弥の先進性と市井の人々への愛情が感じられる舞台でした。

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