日本講談協会「第350回 講談広小路亭」お江戸上野広小路亭

日本講談協会「第350回 講談広小路亭」
上野広小路亭で開催された「第350回 講談広小路亭」にお伺いしました。開場1時間前の10時30分頃から整理券配布、神田伯山さんが出演するとこういう状況になるのかもしれません。無事ゲットして、ベローチェやとんかつ店「井泉」で時間を潰して12時前にお伺い。上野広小路亭は以前にお伺いしたことがあったと思い込んでいたのですが、初めてでした。靴を脱いで上がる。狭い会場、パイプ椅子で4時間耐久は辛いです。

前座:神田小太郎「桃園の誓い」講談で持ち時間5分は無理でしょ。よく頑張った。
神田桜子「柳沢昇進録 お歌合わせ」
5代将軍徳川綱吉に気に入れら出世した柳沢吉保の物語の超序盤、「ひとり寝の別れ」という題に対して妻お染が作った「小夜更けて 夜半の灯 消えぬれば 我が影だにも 別れぬるかな」という歌をきっかけにずんずん昇進。10分でも短いですね。

神田紅純「知恵伊豆」ショートカットの可愛らしい方、子供のお声がお上手。
神田紅佳「長谷川平蔵」鬼平犯科帳でお馴染み(私は知りませんでしたが)の長谷川宣以の活躍を描く。
神田伯山「谷風 情け相撲」
広小路亭の蜜をいじるマクラから、自分の立場を生かした擽りも楽しい。伯山さんの講談は何度か拝見しているのですが、ほとんど間違いが無く、噛むこともないのが凄い。横綱谷風梶之助が、あと1敗したら引退という十両佐野山権兵衛に八百長で負けてあげる話。栄養失調の佐野山の表現、登場人物の中に伯山本人が登場するのも楽しい。今日が今年最後の講座だそうで「この話が最後で良かったのでしょうか」と自問していらっしゃいましたが、笑いの多さは流石です。

神田蘭「信長と吉乃 だって好きになっちゃったんだもん」
噂には聞いていたのですが、面白かった!個人的には樋口一葉の話が聞きたかったのですが、多数決で信長の講談に。伯山さん同様、自虐を駆使した擽りがいちいち面白い。抑揚を付けた話ぶりで引き込まれます。信長は熟女好きだったとは初耳でした。また積極的に聞きに行きたい講談師です。

神田紫「紀伊國屋文左衛門 宝の入船」
こぶしが回るようなパワフルな語り口で、海が大荒れの中、紀州から江戸へミカンを命がけで運ぶ話がよく合っていました。帰りに塩鮭を積み込んで、また大儲けするのも素晴らしい商売人。

神田愛山「北斎と文晁 茶室の合作」
一度拝聴したとても素敵だった愛山師匠。曰く仲入り前の「仲トリ」がトリよりも大事だとか。今回も悠々とした語り口に引き込まれます。浅草の伝法院において11代将軍徳川家斉の前で、長い紙に川を描き、足に朱色の絵の具を付けて鶏を放ち龍田川を完成させたという北斎の逸話は凄い。途中で歌舞伎役者の三代目尾上菊五郎が出てくるのも良い。北斎を訪問した時、あまりの汚さに毛氈を敷いたら北斎にブチ切れられたそう。北斎と文晁の優しい友情のお話でした。素晴らしい。

神田真紅「熊田甚五兵衛 魂の三百石」
ある失敗をし、手討ちにされることになった甚八、自分の首を斬る刀に掛ける水や、汚れないようにムシロを自分で用意したことが大久保彦左衛門に気に入られ、槍持ちなのに「豪傑」というあだ名をもらったことから話は始まる。どこまでも真っ直ぐで素朴な熊田甚五兵衛に惹かれます。

神田阿久鯉「天明白浪伝 稲葉小僧」
盗賊の稲葉小僧が吉原でヘマをやらかした後、大盗賊神道徳次郎の助けで八王子へ遁走。関所でのボンヤリした警備とのやりとりが爆笑。余裕ですね。

神田鯉風「左甚五郎 三井の大黒」
落語や歌舞伎でもお馴染みの左甚五郎の話。「竹の水仙」でも最初にふれるだけの三井に頼まれた大黒、最終的にはしっかり作っていたのですね。「商いは 濡れ手で粟の 一つかみ 守らせたまえ 二つかみたち」の狂歌も秀逸。世話になった棟梁に大黒の礼金180両を全て渡す甚五郎はやっぱり粋で格好良いです。鯉風さんが噛みまくっていたのが少し残念でしたが、江戸時代のヒーローの話は楽しいです。

神田松鯉「直助権兵衛」
神田山陽師匠の「桂馬の高跳び」の文庫本の発売、「冬は義士 夏はお化けで 飯を食い」という川柳のマクラから赤穂藩浅野氏の家臣、不忠の武士、小山田庄左衛門の話。実際は同士から5両を盗み逃亡したそうですが、酔っ払って討ち入りを寝過ごしたということになっており、そこまで悪党な感じはいたしません。丁子風呂、湯女(ゆな)風呂という新しい言葉が楽しい。庄左衛門の父一閑の切腹の場面はなかなか辛いですが、情景が浮かぶ語り口が素晴らしい。

約4時間、パイプ椅子に座り続けなので次の日背骨が悲鳴を。。。次回は座布団&スリッパ持参で。伯山さんもおっしゃっていましたが、講談は勉強になりますね。とても楽しい一時でした!

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