「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」東京江戸博物館

東京江戸博物館「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」
東京江戸博物館で開催中の特別展「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」を拝見しました。人気の展示なので、開場丁度の9時30分に到着。すでに混雑している「第1章 喜多川歌麿」は飛ばして、「第2章 東洲斎写楽」から見始めます。文章は後で読めばいいので、絵をゆっくり鑑賞。1時間してから最初に戻ると、混雑が凄くてもう近くでは見られませんでした。序盤は流れが滞るため大混雑するのは必定です。

「第1章 喜多川歌麿」
喜多川歌麿(1753頃~1806)、美人画絵師として有名。あまりじっくり拝見した記憶がなく、今回も混み合い過ぎて間近からはあまり見られませんでした。画は目が小さく、おちょぼ口の瓜実顔が多い印象。現代の感覚からすれば、美人とは言い難い顔ですが、不思議と美しく見えるのが不思議。色艶に富み、きっと着物の描写とか、ちょっとしたことで艶かしさを表現しているのか。個人的には『婦女人相十品 煙草の煙を吹く女』『婦人相学拾躰 煙草の煙を吹く女』にくらくら。大胆にはだけた着物から覗く小さな胸、若さゆえにやさぐれ味も魅力となっているようです。素晴らしい。

「第2章 東洲斎写楽」
東洲斎写楽(生没年不詳)、1794年(寛政6年)に特徴をデフォルメした役者の大首絵で鮮烈なデビューを果たしたが、1年経たずに姿を消してしまう謎めいた人物。今日の5人の中で一番作品を拝見したことがない方。最も有名なのは『三代目大谷鬼次の江戸兵衛』、大きい顔と懐から突き出した小さい両手のアンバランスさがむしろダイナミックを感じさせます。『花菖蒲文禄曽我』『恋女房染分手綱』などを演じる歌舞伎役者が描かれているのですが、知識不足で演目がわからないことに加え、元の役者の顔もわからない。現代の歌舞伎役者を写楽が描いたらどうなるのだろうか。ちょっと、漫画家の針すなおさんを思い出しました。

「第3章 葛飾北斎」
葛飾北斎(1760~1849)、すみだ北斎美術館にもお伺いしたことがありますし、間違えようはありません。展示も見たことがあるものがほとんどですが、構成力や川や滝、波の表現は何度見ても驚かされます。

「第4章 歌川広重」
歌川広重(1797~1858)、『東海道五拾三次』が有名。今回5人の中で最も印象深い。広重ブルーと呼ばれる藍色に代表されるダークな色調、陰影、赤と青など色の対比が素敵。そして『亀戸梅屋舗」に代表される斬新かつ完成度の高過ぎる構図は唯一無二。『名所江戸百景』が良かった。『両国花火』の花火の表現の新鮮さ、格子際の猫が印象的な『浅草田甫酉の町詣』の描かれていない吉原で働く遊女の姿も感じられる幻想、『深川洲崎十万坪』の大胆な鷹の描写、川を流れる樽にロックオンする鷹の目から筑波山への視線移動の見事さに感動しました。素晴らしい!

「第5章 歌川国芳」
歌川国芳(1797~1861)、2012年の森アーツセンターギャラリーの「没後150年歌川国芳展」、2016年のbunkamuraザ・ミュージアムの「ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞」を拝見したことを思い出します。溢れ出るユーモア、人を楽しませようというサービス精神、現代の漫画に共通するものを強く感じます。スラムダンク、バガボンドの漫画家井上雄彦さんの表現力を思い出します。豪快な武者絵も良いですが、国芳といえば、猫・金魚・雀。この3つは個人的にも大好きな動物。友達になれそうだ。普段は狙われる鴉を捕獲する擬人化された雀たち『雀の百狂 鳥さし』から感じる風刺のエネルギー、きっと国芳さんはニヤつきながら描いているのではなかろうか。面白い。

明治神宮前の「太田記念美術館」や上野の「東京国立博物館」などで浮世絵は拝見するのですが、作者の名前が似ていてどうも混乱してしまいます。今回は有名な5人の浮世絵師に絞っており、それぞれの個性、特徴がわかりやすく、とても見やすい展示でした。大満足。

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