
歌舞伎座で「七月大歌舞伎 昼の部」を拝見しました。七代目團十郎は構想を立て、九代目が完成させた32演目もある「新歌舞伎十八番」のうちの4本を連続で上演する初の試み。
『大森彦七(おおもりひこしち)』
大森彦七盛長:市川右團次(高嶋屋)
道後左衛門:市川九團次(高島屋)
千早姫:大谷廣松(明石屋)
明治30年初演の新作歌舞伎、南北朝時代、楠正成を討ち取った後の大森彦七の話。楠正成の娘千早姫と色々あった後で、楠家家宝の「菊水の宝剣」を姫に渡し逃す。その後やってきた道後左衛門を狂ったふりをしてごまかす場面が見所のよう。馬との絡みは楽しいですが、右團次さんにもう少し大らかさと色気が欲しい。
『船弁慶』
静御前/新中納言平知盛の霊:市川團十郎(成田屋)
武蔵坊弁慶:市川右團次(高嶋屋)
源義経:中村虎之介(成駒屋)
亀井六郎:市川九團次(高島屋)
片岡八郎:大谷廣松(明石屋)
伊勢三郎:中村歌之助(成駒屋)
駿河次郎:市川新十郎(成田屋)
舟人浪蔵:中村福之助(成駒屋)
舟人岩作:坂東巳之助(大和屋)
舟長三保太夫:中村梅玉(高砂屋)
お能でもお馴染みの『船弁慶』、女方の團十郎さんの舞が始まると眠くなるのは何故でしょうか。扇雀さんの義経が定番なためか、虎之介君でも違和感なく頑張っている。舟長役の梅玉さんの伸びやかな踊りと演技にほっこり。義経一行と知盛のバトルシーンはあれですが、最後の幕外の引っ込みは迫力がある。
『高時(たかとき)』
北条高時:坂東巳之助(大和屋)
愛妾衣笠:市川笑三郎(澤瀉屋)
安達三郎:中村福之助(成駒屋)
秋田入道:市川新蔵(成田屋)
安達三郎母渚:中村梅花(京扇屋)
大佛陸奥守:片岡市蔵(松島屋)
最初の駕籠に犬が乗っている状況で、2019年の「七月大歌舞伎」で拝見していたことを思い出す。唐突に登場する二匹の子犬が可愛い。大きい犬もなんか可愛い。死んだ後、駕籠に乗せられ運ばれていく背中に哀愁を感じます。雷鳴と共にアクロバティックに登場した天狗を田楽法師と勘違いする高時、下手に演じていても、なんとなく上手さを感じさせる巳之助さん。普通の役者にはできない激しい動きが素敵。ヒール役が板に付いてきたようです。
『紅葉狩(もみじがり)』
更科姫実は戸隠山の鬼女:市川團十郎(成田屋)
局田毎:中村雀右衛門(京屋)
侍女野菊:市川ぼたん(成田屋)
山神:市川新之助(成田屋)
従者左源太:中村虎之介(成駒屋)
従者右源太:大谷廣松(明石屋)
腰元岩橋:市川男女蔵(滝野屋)
平維茂:松本幸四郎(高麗屋)
お能でもお馴染みの『紅葉狩』、常磐津、竹本、長唄が入り乱れる舞台は迫力満点。男女蔵さんの珍しい腰元役は笑いを誘い(見た目を笑う演出は最近難しい気も)、中村芝のぶさんの侍女に清涼感。廣松君の踊りが意外にキレがあり良い感じ、舞を舞う間、ひたすら酒を飲み続ける従者2人が笑えますが、最後は逃げ出し頼り甲斐無し。ぼたんさんの更科姫を見つめる視線がちょっと怖い。鬼女になってからの團十郎さんは悍ましさや気持ち悪さがしっかり出ており、やはりとても良い。やや体調不良な中、なかなか疲れる4演目でした。


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