東京駅の東京ステーションギャラリーで開催中の「もうひとつの江戸絵画 大津絵」にお伺いしました。文楽の小道具や歌舞伎の演目などでもお馴染みの大津絵。しかも!初めて知ったのですが、文楽好きのヒーロー『傾城反魂香』の浮世又平(吃又、岩佐又兵衛がモデルとも)が大津絵の創始者という説があるとか。やっぱり又さん凄いです。
内容はと言えば画題が限られており、画題が同じだと絵の構成もほぼ同じ、あるいは全く同じだったりするので、そこまでの面白みは無い。展示会も梅原龍三郎、柳宗悦など収集者にスポットを当てている側面も。「大津絵十種」という主要画題があり、それが8割くらいでしょうか。ちなみにチラシは「鬼の行水」という画題で、上の妖怪みたいなものは鬼の腰蓑を掛けた雨雲です。
十種とは「鬼の寒念仏」「長頭翁(外法梯子剃り)」「藤娘」「瓢箪鯰 」「鷹匠」「座頭」「雷公(雷の太鼓つり) 」「槍持ち奴」「釣鐘弁慶」「為朝(矢の根五郎)」。
とはいえ、丁寧でない絵は、可愛らしくて味わいたっぷり。もともとは現代のポストカードのようなお土産ですから、当時の子供や大人も喜んで購入されたのでしょう。個人的には猫、鼠、猿、象、鳩、鷹、鯰など愛嬌のある動物の絵が好み。猫が鼠に酒を飲ませて酔っ払わせようとしている「猫と鼠」、その逆パターンの「酒飲猫」、色々解釈はあるでしょうが、酒を飲むのは楽しいのです。「桃に鳩」は「鳩に三枝の礼あり=子鳩は親鳩に敬意を表し、3本下の枝に留まる」を表すという。後の絵の周囲に教訓めいた賛が付け足されるようになりますが、孟子(儒教)の影響を強く受けているそう。子供の教育の意味もあったと想像されます。
仏画では、道教に由来し、日本の民間信仰、庚申信仰の独自仏、「青面金剛(しょうめんこんごう)」は2人の童子、2羽の鶏と共に描かれ、疫病退散の効果があるとか。、天照大神の化現という「雨宝童子」、白馬に武士が乗った姿の「勝軍地蔵」、大日如来、不動明王以外は造形が同じ十一仏が描かれた「十三仏」、お馴染みの「阿弥陀三尊来迎」などがあり、当時の信仰が知れて興味深い。
福禄寿(外法)の頭に梯子を掛けて大黒が髪を剃る「長頭翁(外法梯子剃り)」も楽しい。絵によって福禄寿が凄く不安そうだったり、気持ち良さそうだったり表情豊かで面白いです。そんな訳で、なんだかんだ言っても楽しい『大津絵』展でした。
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