深川江戸資料館で「古今亭文菊独演会」を拝見しました。
開口一番「出来心」柳家ひろ馬
「やかんなめ」古今亭文菊
今日の昼に高座に上がった浅草演芸ホールの雑多な雰囲気に比べ、この会の雰囲気は本当に有り難いというマクラから。名前は知っていましたが、初めて拝聴する落語は、小三治師匠が発掘されたものだそう。今は無くなった女性特有の病気「癪」の合い薬は、男のまむし指と男の下帯ですが、この落語に登場する女将さんの合い薬は薬缶。登場人物の可内(べくない)は武家の下男の総称。プライドの高い初老の武士の描写が後々効いてくる。そんな武士が女性と可内に翻弄されるのが非常に面白い。下げは「ご案じなさいますな、まだ漏るほどにはございません」
「野ざらし」古今亭文菊
続けて最近あまり演じられない演目ですが、こんなに爆笑したのは初めて。八五郎と隠居、尾形清十郎のやり取りから楽しい。釣りの最中、こんな人が近づいてきたら怖過ぎる。釣竿を扱う所作、顎が釣り糸に引っ掛かる所作の正確さ、声が大きく無駄に上手なサイサイ節など文菊ワールドに引き込まれます。大きな動きは、前回ネタおろしの林家きく麿師匠の新作落語「優しい味」を思い出させる。釣りの部分で終わる場合が多いですが、太鼓持ちが登場する最後までしっかり。下げは「太鼓!しまった、昼間のは馬のコツだった」
「芝浜」古今亭文菊
落語は人の弱さ、情けなさに共感やおかしみを感じるもの、という短いマクラから。文菊師匠の芝浜は初めて拝見しましたが、素晴らしい。耳慣れない「切通しの鐘」は、芝切通にあった「時の鐘」のことだそう。財布の金は42両。勝五郎が財布を拾ったのは夢だと騙される部分、きっぱりと断酒を決意する描写も自然でわかりやすい。「そんな夢まで見ちまうとは…」と絶望する勝五郎に女房が思い切りビンタをかまして励ますのには驚きましたが、これは第二の師匠の影響だったり。酒に溺れて悪い魚を売りつけられ怒っていた客が、復帰した魚勝の魚を食べて、たった一言「明日も来な」という場面も素敵だ。芝浜、そこまで好きではない話ですが、下げの「また夢になるといけねえ」でグッときたのは初めてかもしれません。来年も引き続き応援しております。
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