いつの間にやらチケットが発売されいるため、見逃すことが多い「神田松之丞の会」、3回目ですが、今回から転売防止のため、名前が印字されたチケットは郵送、入場時身分証の提示が必要になりました。松之丞人気の凄さを物語りますね。
ゲスト:神田愛山「髪結新三-鰹の強請」
初めて知った方でしたが、講談界の重鎮。日本酒好きなので「あいやま」と読んでしまいますが「あいざん」と読む素敵なお名前。最初のトークタイムでその好々爺とした愛嬌のある人柄を感じます。歌舞伎でもお馴染みの人気の演目、先日『梅雨小袖昔八丈』(通称『髪結新三』)を原作とした映画『人情紙風船(1937年 監督:山中貞夫)』を見ており、記憶にも新しい。さらにたどれば実話ベースの落語『白子屋政談』が大元です。
枕は「横浜のドン」藤木幸夫横浜港運協会会長が記者会見を行った際の「俺は命を張ってでも反対する」という啖呵に感動したとう話。そんな話がフリになり新三と弥太五郎源七のバトルは凄い迫力でした。ゾクゾクします。綺麗な源七の装いと粗末な車力善八の装いの対比をあわらす際の「喉が乾きそうな手ぬぐい」という表現がとても面白い。先ほどのヒリヒリする啖呵の後だから、余計に煮ても焼いても食えない家主長兵衛と新三のやり取りが笑える。「上総無宿の入れ墨新三さ!」という啖呵の揚げ足を取られて簡単にやり込められる新三は悪党ですが、憎めない男。新三が連れさった白子屋お熊と引き換えの30両のうち、鰹の片身(しかも骨付きの方)の15両、さらに滞納していた家賃の5両を持っていき、さらにお礼の2千疋まで手にした長兵衛が、客に出すお茶もケチる大ケチな小悪党。「狼の人に食わるる寒さかな、上には上がいるものです」。ちなみに新三が買った初鰹の値段は三分二朱、現在でいうと大体6万円くらいでしょうか。なかなか真似のできない気っ風の良さで、人気の演目なのも理解できます。約40分、「間違えても堂々とできる」ベテランの巧味、名人芸堪能させていただきました。
神田松之丞「青葉の笛」
平家物語のうち「無官大夫平敦盛」と「熊谷次郎直実」の切ない名場面から。神田松鯉師匠が話すと25分、松之丞が話すと何故か半分以下の12分(今日は14分でした)。流石に松之丞も名人の後だとなかなか辛い。テンポはもの凄く良いのですが、その分愛山師匠と比べると頭にイメージが湧きにくいか。落語と比べ拝聴する機会の少ない講釈の難しさがわかって興味深いです。直実の息子も十六歳、敦盛も十六歳、この後出家してしまう優しい東武士と気高い公達の最後のやり取りはそれでもグッと来ます。2020年2月の真打ち昇進、六代目「神田伯山(はくざん)」襲名決定おめでとうございます!
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