「壽 初春大歌舞伎」第二部を拝見しました。一題目は坂田藤十郎を偲んで『夕霧名残の正月 由縁の月』から。2005年12月に坂田藤十郎さんが南座の襲名披露興行で初演(元の台本が失われていたため作り直し)したものだそう。坂田藤十郎さんといえば、ほとんどライブで拝見して記憶が無く、直近では2018年「二月大歌舞伎」の『壽三代歌舞伎賑』ですが、これは演技とは言えないですから、さらに遡ると2017年「秀山祭九月大歌舞伎」の『仮名手本忠臣蔵 道行旅路の嫁入』の本蔵妻戸無瀬役ですが、記憶無し。。。
配役
藤屋伊左衛門:中村鴈治郎(成駒家)
扇屋夕霧:中村扇雀(成駒家)
太鼓持鶴七:中村亀鶴(八幡屋)
同亀吾:中村虎之介(成駒家)
同竹三:中村玉太郎(加賀屋)
同梅八:中村歌之助(成駒家)
扇屋番頭藤兵衛:中村寿治郎(成駒家)
扇屋女房おふさ:上村吉弥(美吉屋)
扇屋三郎兵衛:中村又五郎(播磨屋)
伊左衛門、夕霧のコンビと言えば『吉田屋』ですが、こちらは夕霧のなななぬか(四十九日)、舞台上手奥に夕霧の藤模様の紫の打掛が掛かり、寂しい雰囲気は、紙衣姿の伊左衛門の登場でいや増します。『吉田屋』だと落語的な、呑気な感じもするのですが、真逆。太鼓持の虎之介君が可愛らしくて良い味出てます。伊左衛門の気絶後、後ろの壁が上がり、夕霧と桜の木が現れます。なるほど、夕霧は亡霊ですし、舞台も能舞台のような設え。そう考えると、グッと芝居に入りやすくなる。いつも笑えるお役が多い鴈治郎が、優しさはそのまま今日は二枚目に見えますが、扇雀さんがとても良かった。「わしゃ、わずろうてのう〜」の引っ張りはしますが、全く粘っこさがなく、しっとりとした悲しみを含んだ言い方が絶妙。最後の打掛をギュッと抱きしめる伊左衛門が切ないです。まだ上方歌舞伎にほとんど触れていないため和事のなんたるかは理解できませんが、朧げながらも尻尾くらいは見えた気がいたします。
二題目は『仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場』、通称「七段目」、最も上演される部分。とても楽しみにしていたのですが、残念ながら中村吉右衛門さん体調不良で休演です。
配役
大星由良之助:中村吉右衛門(播磨屋)→中村梅玉(高砂屋)
遊女おかる:中村雀右衛門(京屋)
鷺坂伴内:中村吉之丞(播磨屋)
斧九太夫:嵐橘三郎(伊丹屋)
寺岡平右衛門:中村梅玉(高砂屋)→中村又五郎(播磨屋)
前半はカットの短縮バージョンでしたが、やっぱり元の配役で見てみたかったな〜。というか梅玉さんの平右衛門が見たかった!というのが正直なところ。64歳とは思えない切れ味鋭い又五郎さんの平右衛門も勢いがあって良かったですが、もうちょっと愛嬌が欲しいのと、メリハリが無く坦々と進んでいった印象。どうしても梅玉さんに置き換えて見てしまいました。雀右衛門さんのおかるは可愛らしかったですね。一番印象的だったのは半道敵、鷺坂伴内役の吉之丞さん。背中を丸めてひょこひょこ歩く姿がなんとも言えない剽軽さ。命より大事な刀を忘れちゃう所はもう少し笑いが起きても良さそう。最後はおかるも無事で、平右衛門も仇討ちの一味に加われ、目出度しです。吉右衛門さんのご回復を心よりお祈りいたします。
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