「第52回 日枝神社 中秋管絃祭」日枝神社

「第52回 日枝神社 中秋管絃祭」

昨年は、拝見できなかったので2年ぶり。あいにくの曇り空でしたが、雨が降らなくて本当に良かったです。17時半開場ですが、16時半に到着して40番目くらいでしょうか。早く並んだ甲斐があり前の方で鑑賞できました。

<山王太鼓>
大きい長胴太鼓1面、小さい平太鼓2面での演奏で、お三方とも女性。演奏を見ながら拝聴するのは初めてでしたが、動きがダイナミックで格好良いので耳だけの場合よりずっと楽しい。雷という打法ものあるそうですが、正に雷のように芯まで響く迫力。

<管絃>
笙(しょう)、篳篥(しちりき)、竜笛(りゅうてき)、琵琶(びわ)、箏(そう)、楽太鼓(がくだいこ)、鉦鼓(しょうこ)、羯鼓(かっこ)での演奏。笙は天から差し込む光、龍笛は天と地の間を泳ぐ龍の声、篳篥は地に在る人の声をそれぞれ表しています。主旋律を担当する篳篥、そして笙が管弦らしい響き。

「太食調音取(たいしきちょうのねとり)」
それぞれの楽器の音を合わすチューニングのための短い曲。

「合歓塩(がっかえん)」
歓喜の声。脳の中心部まで伝わるような笙の高い音が素敵。天からの光という例えも納得。今の時代管弦なで滅多に聞かないものの、抑揚のないメロディは心地よく体に馴染みます。

「朗詠 嘉辰(ろうえん かしん)」
和漢の唄に旋律をつけて謡うもの。詩の句頭は「嘉辰令月(かんしんれいげつ)」、句所は「歓無極万歳千秋楽未央(かんむきょくばんぜいせんしゅうらくびよう)」、新年を寿ぐ謡で厳粛ながらも華やかな雰囲気。唄が入る管弦は初めて拝聴したかもしれません。令和元年に相応しい曲でした。

「抜頭(ばとう)」
天竺から伝わった曲だそう。親の仇の猛獣を討ち喜び勇むさまが現れているそうですが、舞楽で演奏される場合、嫉妬に燃え鬼と化した女性の面を用いるのは不思議。太鼓が多く登場し、力強い曲調。

<神楽舞>
「四方拝(しほうはい)」
巫女舞です。いつも最初に行われる清めの舞で、通常新年に舞われるもの。鈴と扇を用い、最後はリズムが変わり速舞になるのですが、お能のうような水平的な動きが興味深い。能は神楽から始まり、互いに影響を受けながら発展したという。世阿弥の「風姿花伝」でも申楽(猿楽=能楽)は神楽の「神」字のしめすへんを除いたものと記載があります。

「浦安の舞(うらやすのまい)」
浦安の舞(うらやすのまい)
昔々、日本は「浦安国」とも呼ばれたこともありました。その名の通り平安を祈る舞。昭和天皇御製の「天地の神にぞいのる朝なぎの海のごとくに波たたぬ世を」の歌詞が付きます。箏の音色はとても清らか。衵(あこめ)装束に檜扇、鉾先鈴を用います。ちなみに鉾鈴の鉾は草薙剣、ツバは八咫鏡、鈴は八尺瓊勾玉を表すという。

「日枝の舞(ひえのまい)」
チラシ写真がこの「日枝の舞」、昭和天皇御製の「静かなる神のみそのの朝ぼらけ世のありさまもかかれとぞおもふ」、香淳皇后御歌の「あたらしき力わきくる心地して朝日の光あふぎみるかな」の歌詞が付きます。昭和56年に完成した新しい舞ということもあり、動きのある見ていても楽しいです。鈴の付いた季節の草花を持って舞うのですが、4人が中央に集まるシーン(チラシ写真のシーン)は神秘的。神楽舞は衣装も美しく、尊厳を感じますが、なんとなく身近さも感じられるのが素敵です。有難し。

<舞楽>
「振鉾(えんぶ)」
天上天下、東西南北を清める短い1人舞。周王が戦に勝利した際、天下を平和に治めることは天地の神々に誓った様子を表しています。名前の通り大らかに悠々と鉾を降る舞。

「萬歳楽(まんざいらく)」
萬歳楽(まんざいらく)
隋皇帝の煬帝が作曲したと伝わる曲。優れた君主の治世には鳳凰が現れ「賢王萬歳」と囀る伝説があり、音楽は鳳凰の声、舞は鳳凰の姿。6人で力強く舞い、鳳凰の羽ばたきなどの動きが巧みに表現されていました。迫力あります。最初と最後の不協和音のような演奏は鳳凰に驚く地上の人の声でしょうか。

「延喜楽(えんぎらく)」
延喜楽(えんぎらく)
延喜8年(908年)に藤原忠房が作曲、式部卿敦実親王(あつみしんのう)が作舞されたという日本製の珍しい演目。萬歳楽の答として祝いの場で用いられ、鳳凰をかたどった鳥甲を頭にかぶっています。鳳凰の舞に対する人間の舞という印象も受けました。斜めの大胆な動きが見られ躍動的で勇壮な舞でした。基本的に6人は同じ動きをするのですが、揃い方も見事。

国立劇場でも雅楽の公演はあるのですが、だいたい土、日曜日なので行くことができません。15分の休憩挟み2時間半ほどの公演でしたが、あまり拝見する機会のない雅楽公演、美しいのはもちろん、完全に神様に向けて行われる舞や演奏は崇高で私のような人間でも心が洗われます。公演中は月は空の後ろに隠れていましたが、帰宅後少しお顔を見せてくれました。ちなみに「中秋管絃祭」の次日の9月14日が満月だそうです。

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