江戸糸あやつり人形 結城座旗揚げ385周年記念公演『十一夜 あるいは星の輝く夜に』東京芸術劇場

江戸糸あやつり人形 結城座旗揚げ385周年記念公演『十一夜 あるいは星の輝く夜に』東京芸術劇場
江戸糸あやつり人形、結城座旗揚げ385周年記念公演『十一夜 あるいは星の輝く夜に』を拝見しに東京芸術劇場へお伺いしました。江戸糸あやつり人形初めてで非常に楽しみ。ちなみに結城座は1635年、初代結城孫三郎により創設、色々あって江戸末期に天保の改革で浅草猿若町に移転した5座は、歌舞伎の中村座、市村座、河原崎座、古浄瑠璃の薩摩座、人形劇の結城座とのこと。現在も存続している最も古い劇団かもしれません。

まずは『口上:伊達娘恋緋鹿子 火の見櫓の段』から。

配役
お七:結城数馬改め十三代目結城孫三郎
太夫:三代目両川船遊
三味線弾き:結城育子

十二代目、十三代目が舞台に並び短い口上の後、舞台中央に梯子が用意。小さい床台が用意され人形の太夫、三味線弾きが登場。人形は思ったより小さくて50-60cmくらいか。面白い。義太夫は録音で十三代目の祖母、故竹本素京の語り。場面はお七が櫓の梯子を登る部分を抜粋。いや、凄い。人形に糸が沢山付いておりぱっと見、超絶技巧、梯子を登る場面は2人がかりか。ちょこっと義太夫とずれてる感じもしましたが、素晴らしい。初めて見るあやつり人形、至極興奮しちゃいました。

続いて鄭義信さんの演出による『十一夜 あるいは星の輝く夜に』、事前にシェイクスピアの『十二夜』も読んで準備はばっちりと思いきや、バルカン半島の西側に実在したというイリリアの人物は日本人っぽくて方言を喋っているが何弁かまではわからない。最初の唄の歌詞の「磐梯山」とかでピンと来ればよかったのですが。パンフレットに思いきり「福島弁」と記載されていたのですが、完全に見逃しておりました。

配役
ヴァイオラ/セバスチャン:結城数馬改め十三代目結城孫三郎
サー・トービー/セバスチャン:三代目両川船遊
マルヴォーリオ/役人:結城育子
サー・アンドルー/ヴァイオラの召使:湯本アキ
オリヴィア/役人:小貫泰明
オーシーノー/ヴァイオラの召使/役人:大浦恵実
アントーニオ/ヴァイオラの召使:中村つぐみ
太鼓持ち/爺や/役人/神父:植本純米

客演の植本純米さんのみ普通の人間として登場、面白い。女性人形を男性が使い、男性人形を女性が使い複雑味を増しています。内容はほぼ原作に忠実ですが、双子の妹ヴァイオラ(男性名シザーリオ)が好きになるオーシーノ公爵が、特に前半あまり格好良くなく、好きになる要素が疑問。しかしオリヴィアの叔父で酔っ払いのトービを使う三代目両川船遊(十二代目結城孫三郎)が圧倒的に巧い!足捌きが凄いな。原作でも散々な執事のマルヴォーリオは、亀甲縛りで口まで避けて狂って爆笑。オリヴィアに横恋慕するお坊ちゃんのアンドルーを使う、湯本アキさんも良い味出してました。「チェッ」が可愛い。人形ならではの空中バトルシーンなども楽しいですね。

そして夢か現かわからないラストシーンにやられました。丁度、吉村昭さんの『関東大震災』を読んでいたこともあり、感動とはまた違う、衝動が。最後でやっと福島弁だったことに気付き、題名の『十一夜』もしっくり。文楽とは一味違う趣のある江戸糸あやつり人形、今度は日本の古典作品を見てみたいですね。素晴らしかった!
江戸糸あやつり人形 結城座旗揚げ385周年記念公演『十一夜 あるいは星の輝く夜に』東京芸術劇場
アフタートークで三代目両川船遊さんが「僕が何もしなかったら全く企画が進まなかった」と仰っていました。天才肌っぽい船遊さんに対して十三代目は非常に落ち着いた真面目な印象を受けましたが、今後の展開は如何に。ひとまず目指せ!旗揚げ400年ですね。

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