紀尾井小ホールで開催された「玉川奈々福 喬太郎アニさんをうならせたい~うなうなスペシャル~」を拝見しました。昨年春までに全7回公演し、完結していた企画の番外編、ほんとの完結編とのこと。初めて拝聴する奈々福さん、会場すぐ近くの上智大学出身なんですね。企画を説明するぺら一にも知性が漂います。
「浪曲 百人一首 恋歌編」玉川奈々福、曲師:沢村美舟
まずはオリジナルの演目から。有吉京子さんのバレエ漫画『SWAN』の記憶に焼き付いたシーンのお話から。今、神田愛山師匠に教えてもらった講談を浪曲にしているそう。こちらも完成したら聞いてみたい。講釈を浪曲に移すコツは「蘊蓄を抜き取ってバカを注入」、喬太郎師匠の落語を浪曲に移すコツは「脂と黒ずみを抜いて歌をぶっ込む」とのこと、爆笑。登場した百人一首の歌は以下。
「花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに」小野小町
「あしびきの やまどりの尾の しだり尾の 長々し夜を ひとりかも寝む」柿本人麿
「しのぶれど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで」平兼盛
「恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか」壬生忠見
「今来むと 言ひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出でつるかな」素性法師
「有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし」壬生忠岑
「君がため 惜しからざりし 命さへ ながくもがなと 思ひけるかな」藤原義孝
歌を詠んだ後、歌の心情を語ります。トリの演目を匂わせる描写もあり面白い。「私より早く死なないでねー!」の絶叫で終了。
落語「銭湯の節」柳家喬太郎
奈々福さんの繋ぎ、髑髏タクシーの話の後、浪曲の入った新作落語のネタおろし、バタバタしており、この会に気付いたのが2日前だそう。今日は「誠心誠意のやっつけ仕事」ということですが、本当だったら凄いな。マクラはウルトラマンの話やら初期の藤子不二雄作品の話、白足袋と黒いヒートテックタイツを合わせるとオバケのQ太郎になるんですね。実演に爆笑。演目はお婆ちゃんの「昔は銭湯で浪曲を歌っていたオジさんがいたねぇ」と思い出話を聞いた孫のまいちゃんが浪曲の練習をする内容。練習は「〽旅ゆけば 駿河の道に 茶の香り」という「清水次郎長伝」が難しくて落語「芝浜」浪曲バージョンまでご披露、練習し過ぎて、仕事の口調まで浪曲長になっちゃう描写が最高。下げは「〽むすんで 開いて てをうって むすんで」「たっぷり」
「浪曲 カマ手本忠臣蔵」玉川奈々福、曲師:沢村美舟
最後は喬太郎師匠の落語を浪曲に移したもの。喬太郎師匠のは聞いたことがなかったですが、面白かった〜。浅野内匠頭(長矩)と吉良上野介(義央)が実は恋仲で、それが原因で江戸城松の廊下刃傷事件→仇討ちが起こったという設定。仇討ちのきっかけは忠義とかではなく「L・O・V・E ラブでござる」、爆笑。迫る内匠頭と、拒否する吉良のやりとりが面白いのですが、最後の実は仇討ちではなくて集団心中だったというのにびっくり!吉良の家臣のフォローも凄い。喋る吉良の首の描写も面白かった〜。下げ?は「やっと二人きりになれました」「そうじゃな」
最後は喬太郎師匠も登場、本来の設定は両思いでなく片思いだったらしく、設定の変更や女性らしい感性に滅茶苦茶喜んでいたのが印象的。最後はぴっかり☆のたまでなく、この会の成功や世界平和を願って三本締め。やっぱり浪曲もよいです。とても興味深い公演でした。
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