他の美術館と同様、30分刻みで予約制、サーモグラフィによる検温、マスク着用必須です。東京国立博物館の展示は混み合う場合も多いのですが、人数制限すると、ゆっくり見られるのが良いです。時期的に外国人観光客狙いっていうのもあったのでしょうが、こんな状況になってしまい残念です。あいにくの雨でしたが、着物で来館されている方もちらほら。着こなし方も様々で楽しいです。ただ、着物は普段着用することもあり、好きな題材であるはずなのですが、あまりピンとこない展示内容。理由は、不明。豪奢な着物に現実味が無いからか?着用していた人は分かっても、製作者の存在は感じないからか?
様々な表情の鴛鴦とデフォルメされた筍型の波がスタイリッシュな、チラシにも掲載されている『小袖 黒綸子地波鴛鴦模様』や、千鳥と波が融合する裏地が粋な着物などが素敵でしたが、陣羽織とか火消半纏とかはデザインとしては、そんな好きでないかも。雀が好きだったという天璋院篤姫の着物や袱紗も、雀があんまり可愛くなくて、残念。どれも豪華で美しくはありますが、着物の中で圧倒的衝撃を感じるものはありませんでした。
第4章「モダニズムきもの」のコーナーでは、明治から昭和初期の着物、その時代に女性の普段着として普及した銘仙などが展示されていますが、絵が良かった。60人以上の女性を描きファッションの移り変わりを表現した六曲一双の屏風絵、高畠華宵(たかばたけかしょう)の『移り行く姿』が素晴らしい。着物、洋服、スキーウェア、水着など取り取りの服を着たほとんど表情のない女性たち。少女漫画の元祖のようにも見えますが、現実には有り得ない光景は幻想的で高貴さを感じます。文京区の弥生美術館を訪れた時、この方の絵も見ているはずだが、記憶が無い。。。また行ってみなければ。
とても好きだったもう1点は中村大三郎の『美人図(足利本銘仙ポスター原画)』、赤地に白と黄の菊を大胆に配した銘仙の若い女性の絵、白い肌、赤い唇、大きな目に薄い瞳、洋風の髪型に目が釘付け。後で思い返してみれば原節子さんに少し似てるかもと気付き納得。
最後の第5章「KIMONOの現在」は現代アーティストの作品展示。三越の紙袋の柄にも採用されている森口邦彦さんの『友禅訪問着 白地位相割付文「実り」』。大手企業の紙袋の宣伝力って凄いです。鈴田滋人さんの鍋島更紗、木版摺更紗が素晴らしかった。見た目普通の小父さんですが、、、何でこんなモダンで可愛らしい柄を思い付けるんでしょう!ちょっとミッドセンチュリーっぽいパタンと落ち着いた色彩が素敵です。一番最後に展示されていたギラギラの「YOSHIKIMONO」は全然良いと思いませんでした。。。
あまりピンとこなかったとはいえ、滞在2時間と少し、贅を尽くした着物の数々は目の保養となり、久しぶりに上野に来られたのも良かったです。上野といえば7月23日から東京都美術館で開催の「The UKIYO-E 2020―日本三大浮世絵コレクション」、この美術館にしては珍しい純和な展覧会も興味深いですが、まずは六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催中の「おいしい浮世絵展〜北斎 広重 国芳たちが描いた江戸の味わい〜」でしょう。
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