特別展「小村雪岱スタイル―江戸の粋から東京モダンへ」三井記念美術館

特別展「小村雪岱スタイル―江戸の粋から東京モダンへ」三井記念美術館
日本橋室町の三井記念美術館で開催中の「小村雪岱スタイル―江戸の粋から東京モダンへ」を拝見しました。本格的に見るのは初めてのアーティスト、昭和の鈴木春信とも呼ばれているそうな。

女性の体もアンバランスで、絵自体はそれほど上手とは思えませんでしたが、構図や構成が素晴らしくスタイリッシュで、装幀や挿絵の分野で活躍されたことは納得です。印象に残ったものもいくつか。「奴凧」は縦長の右上に歌舞伎役者を摸した奴凧、左下に小さく天水桶が乗った吉原の屋根が描かれます。中の空間をたっぷりとった構図が良い。代表作とも言える「おせん 雨」は直線な雨と曲線の傘、傘の間から覗く人々と斬新な構図が見事。鈴木春信の「夜更け」と比較されていた「おせん 縁側」、確かに線の細さや体の曲線は似ている、個人的に鈴木春信もそれほど惹かれる作家ではないが、春信の方が圧倒的に動的で画力の高さを感じます。「春雨」は緑の鳥1羽、碧い鳥10羽がシンプルに描かれており、鳥の配置が絶妙で可愛い絵です。チラシにも採用されている「青柳」もやはり、畳と三味線の直線、柳と鼓の曲線、俯瞰で見るような構図が素晴らしい。

装幀では泉鏡花『新柳集』のオウム、同『龍蜂集』は鳩、孔雀、雉などがポップなカラーで描かれモダンでメルヘンチックでチャーミング。同『斧琴集』は緑の外箱、中は青バックに白鷺、牡丹、栄螺や蟹が描かれた砂浜の三重構造になっており豪華です。

挿絵原画では土師清二『旗本伝法』、黒バックに怪しく光る刀身と提灯のみが描かれる。舞台装置も手がけており、永井荷風『すみだ川』舞台装置原画とかテンション上がる。現代の歌舞伎舞台にも小村雪岱の感性が息づいていると思うと、ちょっとした感動があります。

工芸品では上野玉水「群雀木彫置物」が滅茶可愛い。欲しい!調べてみると鶉や鴨など自分が大好きな鳥を沢山作っておられます。松本涼「枯山百合」「折り鶴」も凄い超絶技巧、高木芳真「桜桃牙掘置物」も凄まじきもの。

この展示会で最も感動したのは小村雪岱ではなく、親交があったという鏑木清方「鑓の権三重帷子のおさゐ」、浅香市之進の屋敷で、権三が締めていた帯(お菊にプレゼントされたもの)をおさゐが、剥ぎ取る場面。とんでもない大人(37歳)の色気、これでは権三も一溜りもありませんね。次にこの演目を見るときにはこの絵が浮かぶこと間違い無し。素晴らしい。メインのアーティスト以外にも色々発見があり興味深い展示会でした。

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