東京2020 オリンピック・パラリンピック能楽祭 狂言『鎌腹』/能『三輪 神遊』国立能楽堂

配役
東京2020 オリンピック・パラリンピック能楽祭 狂言『鎌腹』/能『三輪 神遊』

一調『笠之段(かさのだん)梅若実(観世流)
梅若実さんと曽和正博さんによる一調、いつも体調が悪そうな実さんは、切戸口から出るのも大変そうで心配になりましたが、『芦刈』の一部「笠之段」の謡、力強く心に響くお声がとても素敵でした。

あれ御覧ぜよ御津の浜に。網子ととのうる網船の。えいやえいやと寄せ来たるぞや。名にし負う難波津の。名にし負う難波津の。歌にも大宮の。内まで聞こゆ網引きすと。網子ととのうる。海士の呼び声と詠みおける。古歌をも引く網の。目の前に見えたる有様。あれ御覧ぜよや人人。おもしろや心あらん。おもしろや心あらん。人に見せばや津の国の。難波わたりの春の景色。おぼろ舟こがれ来る。沖のかもめ磯千鳥。連れだちて友呼ぶや。海士の小舟なるらん。雨に着る。田簑の島もあるなれば。露も真菅の。笠はなどか無からん。難波津の春なれや。名に負う梅の花笠。縫うちょう鳥の翼には。鵲も有明の。月の笠に袖さすは。天つ乙女の衣笠。それは乙女。これはまた。なにわ女の。難波女の。かずく袖笠肘笠の。雨の芦辺の。みだるるかたおなみ。あなたへざらり。こなたへざらり。ざらりざらり。ざらざらざっと。風の上げたる。古簾。つれづれもなき心.おもしろや。

狂言『鎌腹(かまばら)三宅近成(和泉流)
三宅右矩さん体調不良で休演のため、弟の近成さんがシテを勤められました。山へ行かないことを妻にしかられ、鎌で腹を切って自殺すると言い出す男のわかりやすい面白話。凡人に切腹などできるわけはありません。妻と仲裁人がどっかに行ってからは独り舞台、脇柱に鎌を結びつけ、目をつむって突っ込むむも死ねる訳はありません。最後は見物人がいないのに切腹なんかできるかい!さ、山へ行こうと仕事へ向かいます。最後に村人とのやりとりが入るのですが、洗足用意しといてね〜などと非常に長閑な風景で終わるのが良い。

能『三輪 神遊(みわ かみあそび)友枝昭世(喜多流)
『妹背山婦女庭訓 道行恋苧環』のお三輪ちゃんとの関連から見てみたかった演目ですが、関係は無さそう。これは自分にとって非常に難解な演目でした。正面席最前列中央だったのですが、何度か寝落ち。。。小書「神遊」により装束が喝食鬘、金風折烏帽子、小面、単狩衣、緋大口に、神楽を短縮し「破の舞」が入り、橋掛りで翁の型、囃子の流しで位が進むなど、神話の荘厳さが強調されるという。

奈良県桜井市にある三輪明神大神神社(おおみわじんじゃ)のご祭神は大物主大神(おおものぬしのおおかみ)なのですが、この能では女性の神。その女神が、素性のわからない恋人の衣に糸巻き(苧環)の糸を針に通して、糸が伸びていった先を尋ねると三輪山の杉にたどり着いた話から、天の岩戸開きの話に一気に飛ぶので頭が付いていけず。三輪の神が僧に罪を助けて下さい、と言う意味もわからない。伊勢と三輪の神が一体分身というのも頭ではわかるですが、どうも心でしっくり来ませんでした。もちろんクライマックスの天の岩戸開きを表現する舞は素晴らしく、表情が変わる面も良かったですが、話に付いていけなかったので感動はできず。まだまだ勉強が必要です。

コメント

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