
浅草木馬亭で真山隼人全国ツアー 近松門左衛門没後300年『傾城反魂香』を拝見しました。全三段のうち歌舞伎や文楽では『土佐将監閑居の場(吃又)』しか上演されない近松門左衛門のお馴染みの戯曲。通しで聴けるのはもの凄い嬉しい。
第一話「武隈の松」
発端は、六角左京太夫頼賢から奥州の名木「武隈の松」を描くように命じられた狩野四郎次郎元信、しかし松は既に枯れて存在しない。それを助けたのが帝の勘気を蒙り、京山科で逼塞中の土佐将監光信の娘、お金のために女郎屋舞鶴屋に売られた遠山(後にみや)、源氏名は「松」。これだけ知るだけでも、理解がとても深まります。そして歌舞伎では急に登場する狩野雅楽之助に遠山が「武隈の松」の真似をさせるのも楽しく、また『鞘当』でお馴染み、遊女葛城を巡って争う名古屋山三と不破伴左衛門も登場するのも引き込まれる。積極的な銀杏の前も素敵ですが、最後は不破道犬に捕まった元信が口中から出た血を襖に吐きかけると虎になり、その虎に乗って逃げるファンタスティックな内容。
第二部「浮世又平」
歌舞伎でお馴染みの部分ですが、内容を知っているせいかしばし爆睡。又平が手水鉢に描いた絵は抜けるのではなく、裏側に背中が描かれているのが興味深い。最後は救出に向かった又平夫婦の前に都合よく銀杏の前が登場する。
第三部「舞鶴屋」
舞鶴屋の前に切られて死んでいる不破伴左衛門から。切ったのはもちろん山三ですが、数年経ち遣手となり働いていた、みやの機転で救われる。そこへまたしても都合よく行方不明になっていた元信と雅楽之助がやってきて、めでたく、みやには全くめでたくなく元信と銀杏の前の祝言に。
第四部「熊野詣」
祝言のために北野天神に向かう銀杏の前の駕籠の前に急に現れるみや、そこでみやは7日間だけ、元信と結婚させてくれというとんでもないお願いをしますが、あっさり受け入れる銀杏の前。元信とみやが期間限定の結婚生活を始めて5日目、舞鶴屋の主人伝三郎がみやの笠を持ち喪服姿で現れ、みやが死んでいたことを告げられる山三。2人の部屋に行くと反魂香が焚かれていますが、実際に客席にお香の匂いが漂うのは、歌舞伎の『本朝廿四孝 十種香』のよう。そして元信の絵の中で行うみやの熊野詣の場面がとても悲しく、限りない美しさにグッと来る。つい先日、熊野に訪れたので感慨も一入。確かにこの場面は目に見るより想像する方が面白そう。近松は、こんなにロマンチックな話も書けたのかという驚きもある。素敵な会を開催してくれた真山隼人さん、沢村さくらさんに感謝です。

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