アートスペース兜座で「第三回富士綾那独演会」を拝見しました。表情が少し変わったように見えるのは、髪型のせい、疲れのせい、ネタ下ろしの演目のせい、はたまたヨーロッパ遠征のせいでしょうか。
「木村の梅」富士綾那、曲師:沢村博喜
徳川家光と大久保彦左衛門の物語。秀吉の家臣でありがなら木村長門守(木村重成)の勇猛さに感動した家康が、白梅に「木村の梅」と名付けたが、その梅がトラブルの元に。終盤の家光の「彦左」3連発は良かったが、彦左衛門の剛直さが肝なだけに、お声の調子が良くないのは残念。座る席を誤り集中しにくかったのは自業自得です。
「は組小町」富士綾那、曲師:沢村博喜
昭和に活躍した関西浪曲界の大看板、冨士月子さんのネタだそう。珍しい女性の仇討ちもの。日本橋の火消し「は組」の頭、源右衛門、その娘お初、夫源次。「い組」の頭の松兵衛の息子三五郎はお初に振られた腹いせに、源次を火消しの掟を利用して焼き殺す。突然のジャジャーンという効果音、ハクション大魔王よろしく誰かが登場したのかと思ったが、一拍遅れて半鐘と気付く。。。短い演目ですが、正月浅草で起こった火事で復習するお初の、愛情というよりは般若のような憤怒、唸る関西節、恨みの感情が迸り突っ走る。この部分の表現の仕方で印象は随分異なるのではないでしょうか。浪曲は格好良い場面で終わるが、結局お初も大火傷を負い、死んでしまう、どうにもやり切れないお話。いつか講談でも聞いてみたい。
その後のトークコーナー、劇団でヨーロッパの3都市ウィーン、ハノーファー、アムステルダムでオーケストラと一緒に公演をした話、憧れのNHKの505スタジオで収録された「浪曲十八番」の話など。ヨーロッパを巡ったにも関わらず、ハプニングや面白い土産話は特に無かったそう。。。ヨーロッパでも読書と浪曲、想像通りの闇の部分が暴露され、好感が持てる。いつか「私の節」が聞けるのが楽しみです。
コメント