次回配分がおかしい「三月大歌舞伎」第二部を拝見しました。他の部は二幕で1時間半ほどなのですが、第二部は『熊谷陣屋』だけで1時間半あり、お得な感じ。まずは『一谷嫩軍記 熊谷陣屋』から。歌舞伎では2回ほど見ている気がしますが、いわゆる「芝翫型」に対して「團十郎型」を拝見したのは初めてで、とても新鮮でした。
配役
熊谷次郎直実:片岡仁左衛門(松島屋)
源義経:中村錦之助(萬屋)
熊谷妻相模:片岡孝太郎(松島屋)
梶原平次景高:片岡松之助(松島屋)
堤軍次:坂東亀蔵(音羽屋)
藤の方:市川門之助(瀧乃屋)
白毫弥陀六実は弥平兵衛宗清:中村歌六(播磨屋)
熊谷の妻相模と敦盛の母藤の方が久しぶりに出会う「熊谷桜の段」がざっくりカットされているため、藤の方が急に出てきて直実に切りかかったりするので、初めて見る方は驚かれるのでは。藤の方役の市川門之助さんはもう少し重みが欲しいかも、庶民的な相模と対比が弱く、二人の部分はやや退屈。笛の演奏で寝かけました。。。この直前「お土産処 木挽町」で門之助さんの「NO KABUKI NO LIFE」Tシャツを見てしまった影響もあるのかも。。。熊谷は、もちろん力強さはありますが、敦盛最後を語る場面にしても終始悲しみを秘めている印象。こういう演じ方もあるのですね。「お騒ぎあるな〜」からの制札の見得も然り。仁左衛門さん、優しいです。梶原景高役の片岡松之助さんは、舞台を上手から花道へ駆け抜けた後、弥陀六にやられて、すぐ死んでしまいましたが、憎たらしさが素晴らしく、それでいて小悪党っぷりが出ていて素敵。そして歌六さんの弥陀六も良い。義経に宗清と本名を呼ばれた後、「宗清さん、義経さんが読んでますよ〜」としらばっくれようとする剽軽ぶり、短い時間で弥陀六と宗清を対比させる演技が素晴らしい。弥陀六の長台詞は、当初は意味が全くわからなかったのですが、今は「我を恨みん浅ましや」、衣装に平家の武将の名前が書いてある意味も、弥陀六の深い悔恨も理解できる。「よしつね」と3回言いましたが、3回とも「よしぷね」としか聞こえなかったのはご愛嬌でしょう。幕が閉じて僧型の熊谷が残り、三味線の切ない演奏に合わせ「十六年も一昔、夢であったなぁ」の有名な台詞。坊主頭に右手を乗せ、潤い含みじっとりと。そして、ゆっくりと花道を引っ込みます。流れとしてはやや不自然な気もしますが、切なくてとても良い。
続いては『雪暮夜入谷畦道(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)』通称『直侍』、また『蕎麦屋』とも。清元連中による浄瑠璃「忍逢春雪解」に乗せて。初めて見る演目だと思っていたのですが、幕が開いた瞬間既視感、調べれば2017年11月「吉例顔見世大歌舞伎」で拝見していました。配役もほぼその時と同じです。
配役
片岡直次郎:中村菊五郎(音羽屋)
三千歳:中村時蔵(萬屋)
寮番喜兵衛:嵐橘三郎(伊丹屋)
亭主仁八:市村橘太郎(橘屋)
暗闇の丑松:市川團蔵(三河屋)
按摩丈賀:中村東蔵(加賀屋)
「入谷蕎麦屋の場」は当時の蕎麦屋の雰囲気が分かって面白い。入谷は蕎麦屋が多いんですね。菊五郎さんの蕎麦の食べ方に注目していたのですが、思ったより普通に食べてました。。。落語の「そば清」をイメージしていたのですが。按摩丈賀役の東蔵さんははまり役ですね。按摩自虐ギャグも楽しい。慣れもあるのでしょう、清元の詞章もかなり聞き取れるようになってきましたが、「入谷大口屋寮の場」は、リズムに気持ちよくなったためか大半寝てしまいました。。。久しぶりの長丁場のせいかもしれません。不覚!
今週の国立劇場歌舞伎、来週の第一部も楽しみにしています!
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