『裸の島(1960年 監督:新藤兼人)』

新藤兼人監督の『裸の島』を初めて拝見しましたが、とても衝撃的な面白い作品!!『原爆の子』『第五福竜丸』『鬼婆』『竹山ひとり旅』『北斎漫画』『午後の遺言状』『一枚のハガキ』などを拝見していますが、社会派という感じが強く、そこまで印象に残るものがなかったのですが(『鬼婆』『北斎漫画』はある意味脳裏にこびり付いていますが)、『裸の島』は素晴らしかった。

配役
トヨ:乙羽信子
千太:殿山泰司
太郎:田中伸二
次郎:堀本正紀

出演者はほぼ4人、スタッフは11人と少人数、500万円の低予算、そしてほぼ無声、瀬戸内海、広島県三原市の電気、ガス、水道もない宿禰島に暮らす4人家族の物語。島でサツマイモを育てており、島には真水が無いので、真水はわざわざ船で対岸まで行き、江戸時代の天秤棒の水売りの如く、なん往復もしなければならない重労働。映画の前半はトヨ、千太夫婦が延々と水は運び、畑に水を巻く様子が流れます。中でも乙羽信子さん演じるトヨが島の斜面をよろよろしながら登る姿に、零さないで〜、と手に汗握る。台詞も全く無いのですがこのシーンだけで、不思議とジーンと来ていまいました。案の定、トヨが転けて大事な水を溢してしまう。側で見ていた夫が労いの言葉でも掛ける事を願っていたのですが、あっさり裏切られ、思いっきり平手打ち!いや、もうここまででかなりお腹いっぱいですよ。

その後のドラム缶風呂に息子たち、男、女と順番に入るシーンがとても良い、乙羽信子さんの表情が素晴らしく良い。さらに息子2人が大きい鯛を釣り上げ、町に売りにいったり、地主に農作物を納めたり、長男が病気で死んだり、学校の同級生と先生が島に来てお葬式をしたり、土葬!したり、ほぼそれだけを坦々と誠実に写していきます。そしてラスト、急に畑に巻く水をぶちまけ、作物を引き抜き、畑にダイビングして号泣。そしてスッと立ち上がり、再び畑仕事を始める。終幕!説明するとあっという間の映画ですが、その分、密度が濃い!小津監督の映画も同様ですが、それにしても濃厚、こういう映画は大好きです。

「モスクワ国際映画祭」でグランプリを取得しているのは社会主義の風を感じますが、鬱々としたエネルギーに満ち溢れた凄い映画。新藤監督も凄いですが、乙羽信子さんが凄過ぎる、この役とか鬼婆とかこの方にしか絶対できないでしょ。感動しました!

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