東京都美術館で開催中の「ゴッホ展 響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」を拝見しました。何十年か前にゴッホ展に行ったことがあり、もういいかなと思っていたのですが、知人にお勧めされたため行くことに。結果、ゴッホ凄い!
今回の展示会は世界最大のゴッホ作品の個人収集家ヘレーネ・クレラー=ミュラーが初代館長を務めたクレラー=ミュラー美術館の収蔵作品を集めたもの。開館と同時の9時30分に予約、最初のゴッホ以外の作品はすっ飛ばして「素描家ファン・ゴッホ、オランダ時代」からじっくり拝見。人物を描いたものも多いですが、整った顔ではなく、素朴な、無骨な顔のモデルを選んでいるのがこの人らしい。作品の中では「砂地の木の根」、切り取り方がとてもいい。やっぱり人物画より風景画のが印象に残ります。というか人物のデッサンは技術の下手さが際立つな。面白い。「画家ファン・ゴッホ、オランダ時代」は暗い絵ばかり、その絵のてかり具合は、夜の川面を連想させます。この中では「鳥の巣」が好き。ゴッホ自身で巣の収集も行い、子供にお小遣いを渡し、巣を集めてこさせていたという。鳥の巣に惹かれるっていう感性が素敵。「画家ファン・ゴッホ、フランス時代」「パリ」では急に色が明るくなる。「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」の絵なんかは、本当に描きたかったの?と疑問に思うが。この中で印象に残ったのは日本の浮世絵などに影響を受けたという「草地」、小作品ですが、画面いっぱいに単に草が描かれたもの。素朴で良いな〜。
そして「アルル」「サン=レミとオーヴェール=シュル=オワーズ」の自殺する2年前からの作品が超絶!「夕暮れの刈り込まれた柳」「レモンの籠と瓶」「種まく人」「サン=レミの療養院の庭」「麦束のある月の出の風景」「悲しむ老人(「永遠の門にて」)」「夜のプロヴァンスの田舎道(糸杉)」など印象に残るもの多数。絵が動いて見えるような感覚は実物を見ないと生まれない。ゴッホ調の油絵を繋いだ超絶アニメ映画『ゴッホ 最期の手紙』を作りたくなったのも納得!「夕暮れの刈り込まれた柳」は線描で描かれた小品、夕暮れなのに朝日のような描き方に、ゴッホの運命を重ねてしまう、太陽が象徴的に描かれた作品は良い!ヘレーネが天国と称した、写実とはほど遠い「レモンの籠と瓶」も素敵。やっぱり黄色の画家なのでしょうか。「種まく人」の生命力はなんなんだ!カンバスの中央上方に太陽、躍動感が全く感じられない農夫が描かれていて、現代の感覚としては、なんなんだこの馬鹿みたいな構図は!と思えますが、それがゴッホの凄さなのかもしれない。そして絵の凹凸や迫力は写真などで見るのと、実際目で見るのと全く違う印象を与えるのも感動を増す。ただただ美しい「サン=レミの療養院の庭」、ただただ悲しい「悲しむ老人(「永遠の門にて」)」、「夜のプロヴァンスの田舎道(糸杉)」はちょっと技巧的な部分がいやらしく思えなくもないですが、やはり素晴らしかった。
最後まで見て、もう一度最初から見ようと思ったら、もう人がいっぱい。早々に諦めました。滅茶苦茶性格が捻くれた人なのかもしれませんが、描くために純粋に描いた人なのでしょう。誰にも到達できない世界に到達した天才ですね。最高です!
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