「サントリー芸術財団50周年 黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部-美濃の茶陶」サントリー美術館

サントリー美術館で開催中の美濃焼の展示「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部-美濃の茶陶」を拝見しに参りました。「しびれるぜ、桃山。」というキャッチコピーですが、1点目の展示品「黄瀬戸茶碗 銘 難波」で早くもしびれた!薄手で直線的、端正な造形が大変美しい。茶碗となっていますが、もともとは料理を入れる器として作られたものかもしれません。中央に横一直線が入り、その上に「胆礬 たんぱん」と呼ばれる緑のぼかし、その緑の中に簡素な植物模様が描かれています。その植物を葦と見て、難波の銘なのでしょうか。凛とした形と淡い黄色に濃いグリーンという色味の調和が完璧。素晴らしい。

4種の美濃焼が取り上げられていますが「黄瀬戸」の器に好きなものがとても多かった。黄瀬戸といっても黄の色味は安定せず、偶然性にかなり左右されるのかもしれません。無柄でつるりと、そしてくっきりとした黄が映える「黄瀬戸六角猪口猪口」、緑のぼかしの中に一輪描かれた小花が可愛い「黄瀬戸小皿」、油揚手(あぶらげて)というざらりとした柔らかい質感に伸び伸びと1本の大根が描かれた「黄瀬戸大根文輪花鉢」、葉っぱの部分はちゃんと緑色が付いているのも素敵。「黄瀬戸立鼓花入」は小鼓型がユニーク。黄瀬戸は色味が明るいためか、描かれる絵も可愛いような気がいたします。

個人的に織部と志野はあまり好みではありません。織部はちょっとやり過ぎな感じがしますが、それでも傘型やゴブレット型、南蛮人を型どったロウソク置など発想の自由さは面白く感じます。あの複雑な平皿はタタラ(粘土板)成形で作られているんですね。

志野は表面のぶつぶつ(穴)がある作品が苦手です。。。グレーと白で温かみのあるセキレイを描いた「鼠志野鶺鴒文鉢」、燃えるような赤が鮮烈な「茜志野茶碗」がとても素敵、これは加藤唐九郎の作、桃山時代の陶器だけでなく荒川豊蔵、加藤唐九郎の代表作も展示されています。加藤唐九郎の作品で「鼠志野茶碗 銘 鬼ヶ島」は曇り空のような深く柔らかみのあるブルーグレーで見ていて心が落ち着きます。興味深いところでは歌舞伎で人気の演目『与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)』の与三郎から名前を取った「志野呼継茶碗 逸翁歌銘 与三郎」、随所に施された金継が刀傷の例えで、そう思うとちょっと痛々しいが、逸翁こと小林一三氏(阪急東宝グループ創業者)は宝塚だけでなく歌舞伎もお好きだったようですね(当然かっ!)。

ちなみに「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部」はずっと瀬戸で作製されたと考えられていましたが、昭和5年(1930)に荒川豊蔵が岐阜県可児市の古窯跡から志野の陶片を発掘したことから美濃で作製されていたことが判明したそうです。美濃で焼かれたのに黄瀬戸、瀬戸黒というややこしい名前の理由が分かりました。

1点だけ長次郎作の「黒楽茶碗 銘 釈迦」が展示されており瀬戸黒との比較も楽しい。しかし長次郎の光沢を抑えた吸い込まれるような深みのあるブラックホール様黒は小ぶりながらも凄い迫力ですね。台風一過の日だったためか、とても空いておりゆっくり拝見できたのものよく、大変目の保養になりました。美術館は月曜休館日が多いですが、サントリー美術館は火曜休館なのが嬉しい。私の好きなビールの銘柄は「モルツ」です!

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