特別企画「和巧絶佳展 令和時代の超工芸」 パナソニック汐留美術館

特別企画「和巧絶佳展 令和時代の超工芸」 パナソニック汐留美術館
パナソニック汐留美術館で開催中の特別企画「和巧絶佳展 令和時代の超工芸」を拝見しました。こちらは予約制ではなく、普通に入場可能。パナソニック汐留美術館はどの展示会も空いていることが多く、ゆっくり見られるので気に入っています。比較的若手の日本人作家の作品を集めた展示となっています。

まず第1章『日本の伝統文化の価値を問い直す「和」の美』、このコーナーで展示されている3人の作家の作品はどれもキャッチーで分かりやすい。

「桑田卓郎」
陶磁器にみられる粒状になった釉薬の縮れである梅華皮(かいらぎ)を大胆に配したカルフルな陶器。赤い茶碗に青い気泡のようなものがいっぱい付着した「茶垸」、色使いはちょっと草間彌生さんっぽくて、サイケデリック。金や白金を使用した大きな作品もインパクトはありますが、あんまり好きじゃないかも。。。

「舘鼻則孝」
この方の作品「ヒール・レス・シューズ」も色んな所で拝見します。メッチャ歩きにくそう。

「深堀隆介」
色んな所でよく見る金魚の作品、実物を拝見するのは初めてです。アクリル絵具と透明樹脂の2.5Dペインティング、こうなってたのか。面白いな。升に金魚が入ってた「金魚酒 命名 伽琳」はいいな。欲しいです。

続く第2章『手わざの極致に挑む「巧」の美』は、第1章とは真逆でかなり接近しないと凄さのあまり伝わらない作家の作品。

「池田晃将」
螺鈿と蒔絵の精密作品。リンゴや立方体に螺鈿で小さい数字をびっしり貼り付けた作品などサイコパスとしか思えん。凄い。絶対「攻殻機動隊」とか好きでしょうね!

「見附正康」
九谷焼の中でも「加賀赤絵」に特化した作品。これも凄い。目がチカチカする。米粒に写経とかできちゃう人だ。離れてみると大きな柄となるのですが、細かいものが集まった独特の揺らぎが素敵。

「山本茜」
截金(きりかね)という手法を初めて知りました。金銀箔等を数枚重ね合わせ、細く直線状に切った「細金」を張り付けて優美で鋭い光彩を放つ文様を描き出す技法で、主に仏像や仏画の装飾に用いられるものだそう。それをガラスで融着させるオリジナルの技法。凄い。源氏物語の各帖をモチーフにした作品が良い。「第四十帖『御法』」は紫の上が息を引き取る最も印象的な話の1つ。紫からグリーンのグラデーションガラスに斜めに浮遊する截金。パターンと色の重なりの変化が面白く、作品の周りをぐるぐると永久に回転していたくなります。素晴らしい。もう1点は「第十九帖『薄雲』(雪明り)」、藤壺崩御というエピソードもありますが、明石の君と姫君の別れのイメージだという。截金硝子香合「ふくら梅」、截金硝子長方皿「流衍」もとても良い。今展示会で最も好きな作家でした。

「髙橋賢悟」
真空加圧鋳造による超絶的アルミニウム作品。薄さ0.1mm、金属とは思えん。ベースが忘れな草っていうのも良いですね。世界の終末、その後を思わせる動物や人間の頭蓋骨に花の装飾のも素敵だが、一番気に入ったのは「花新風」という桜の作品。美しや。

最後の第3章『工芸素材の美の可能性を探る「絶佳」』は、工芸品の素材感を強く感じる作品たち。

「安達大悟」
板締め絞りで染色した作品。これも手間がもの凄くかかっていると思われるのですが、パターンが化学的というかデジタル的なためか、ちょっと伝わりにくい気がいたしました。作品が1つだけだったので、別のものも拝見してみたい。

「坂井直樹」
鍛金による鉄製の作品群。直線的な造形は格好良いですが、個人的にはもう少し温かみを感じられる方が好み。

「新里明士」
蛍手(ほたるで)と呼ばれる透光性のある文様が施された磁器作品。「光器」と名付けられた作品群、こんなに脆そうで、儚い磁器作品もそうそうない気もしますが、儚いものは美しい。「穿器」はカーボンのような、紙のようなマットで無機質な質感が面白い。これも手で簡単に握りつぶせそうな脆さを感じます。黒田陶苑(渋谷?)でも扱っている作家らしいので、素敵な酒器があったら欲しいな。

「橋本千毅」
立体的な虫の作品は少し、ゾワッとしましたが、金蒔絵と螺鈿で唐草を描いた六角柱型の「唐草螺鈿箱」が素敵。

「佐合道子」
大理石っぽくも見えますが、これも土かよ。蠢めかないはずなのに、蠢いてみえる、ちょっと気持ち悪くも思える作品群。「風の谷のナウシカ」の腐海の植物や粘菌のような、巨大生物の臓器のような、近づくと取り込まれてしまいそうな恐怖感を覚えます。

最後にルオーの部屋で見て「マドレーヌ」もとても良かった。サーカスの女性道化師を描いた作品で珍しく明るい色調で、笑顔がとても素敵な女性。こちらの看板娘だそうです。お客も15人くらいしかおらず、2時間ほどかけてゆっくり作品を拝見、想像したよりずっと見応えのある展覧会で大満足でした。

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