歌舞伎座で「二月大歌舞伎 第三部」通し狂言「霊験亀山鉾(れいげんかめやまほこ)」を拝見しました。この20年ほどは仁左衛門さんしか演じていない演目ですが「片岡仁左衛門一世一代にて相勤め申し候」ということで今回が最終。2017年10月に国立劇場で拝見していますが、ほとんど記憶無し。
配役
藤田水右衛門/隠亡の八郎兵衛:片岡仁左衛門(松嶋屋)
芸者おつま:中村雀右衛門(京屋)
石井源之丞/石井下部袖介:中村芝翫(成駒屋)
源之丞女房お松:片岡孝太郎(松嶋屋)
石井兵介:坂東亀蔵(音羽屋)
若党轟金六:中村歌昇(播磨屋)
大岸主税:中村いてう(中村屋)
石井源次郎:中村種太郎(播磨屋)
石井家乳母おなみ:中村歌女之丞(成駒屋)
縮商人才兵衛:片岡松之助(緑屋)
丹波屋おりき:上村吉弥(美吉屋)
藤田卜庵:松本錦吾(高麗屋)
仏作介:片岡市蔵(松嶋屋)
大岸頼母/掛塚官兵衛:中村鴈治郎(成駒屋)
貞林尼:中村東蔵(加賀屋)
とにかく仁左衛門さんのこっくりと匂うような悪党ぶりを楽しむお話、場所がころころ変わりますが、舞台転換もスムーズで良い感じ。「鵜の丸の一巻」を守護する白蛇たちが可愛い除幕。三幕目、仁左衛門さんがお休みの「播州明石網町機屋の場」はやや退屈、芝翫さんのわなわなする手の動きが最後まで気になります。「駿州弥勒町丹波屋の場」は仁左衛門さんの二役目、隠亡の八郎兵衛は当然として、もてないっぷり炸裂の鴈治郎さんも楽しく、吉弥さん演じる水右衛門側のおりきも、時に垣間見える品の無さが良く、上方役者たちの大らかで嫋やかな雰囲気が素敵。水右衛門も悪いが、仇討ちを誓い香具商弥兵衛に変装し、様子を探っている石井源之丞も、芸者おつまとの間に子ができていたり、さらに事情を知ったおつまを殺害しようとしたり、なかなかの下衆っぷり。こんな性根なら返り討ちにあっても仕方なし。。。水右衛門と八郎兵衛の早替わりも良いな。「安倍川返り討ちの場」はまんまと落とし穴にはまる源之丞、返り討ちを楽しむ水右衛門が怖い。最後のだんまりは、芝翫さんの二役目、袖介が急に出てくるのですが、苗字は一緒ですが、兄弟でもないのに同じ顔なのは混乱。暗い設定なのに、照明が明る過ぎるのは違和感が少し。
早桶に入って、おりきの手引きで逃亡する水右衛門、狼の追いかけられて桶を取り違える。現代の鞄取り違えとかの先駆?本当に古典的な技術なのね。「焼場の場」では本水を使った八郎兵衛とおつまの立ち回りが絵になる格好良さ。そして八郎兵衛が井戸に逆さに落ちてから、燃やされている早桶の中にいる水右衛門への早変わりでトラブル発生。下から早桶の中に上がる時に何かがあったよう。上がって下がって、また上がって蓋に引っかかるハプニング。そんな事があったものの、おつまを殺害し、殺した人数を指で数える様は非常に恐ろしい。
幕間挟んで「播州明石網町機屋の場」、縮商人才兵衛役の松之助さんの優しさが沁みる。返り討ちにあった源之丞の母、貞林尼が祝言を上げたいとやってきますが、実は位牌という落ちで、お松の気持ちを考えると、上げて落とすのは非道いなと思いましたが、自害の覚悟を知ったら許せるし、意外に良い場面。大詰「勢州亀山祭敵討の場」、やっぱり仁左衛門さん、ちょっと腰あたりを痛めたのか、歩き方も座り方もぎこちなく心配。あんだけ仕組んできたのに、あっさり仇討ち成功。威勢の良い祭りとの対比。やはり水右衛門と八郎兵衛の二役を同役者がやることに意味があるのかな。とにかく存分に堪能させていただきました。仁左衛門さん何卒お大事に、最後まで演じきれるよう祈っております。
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