十二月大歌舞伎 第二部『爪王』『俵星玄蕃』歌舞伎座

十二月大歌舞伎 第二部『爪王』『俵星玄蕃』歌舞伎座
歌舞伎座で「十二月大歌舞伎 第二部」を拝見しました。

一本目は『爪王(つめおう)』です。動物文学の作家・戸川幸夫の作品を平岩弓枝が脚色した中村屋所縁の新作舞踊劇とのこと。

配役
狐:中村勘九郎(中村屋)
鷹:中村七之助(中村屋)
庄屋:中村橋之助(成駒屋)
鷹匠:坂東彦三郎(音羽屋)

雪の中の鷹匠の家から、七之助さんの鷹の吹雪、羽柄の着物に、鷹様の髪飾りが素敵、吹雪を心底可愛がっているのがわかる、彦三郎さんの優しい演技も良い。この優しい気性は吹雪にも伝わっている。物語っぽい具体的な詞章の長唄も珍しく親しみやすい。最初の赤狐との闘い、人に迷惑をかける、人間から見ると悪い狐ですが、狐の仕草にチャーミングさが溢れるのは仕方無し。鷹と狐との闘いを模した舞踏は序盤はゆったり、少し官能も感じる様子見から激しく。凛とした七之助さんに、やはり勘九郎さんのリズム感が素晴らしく、難しいことをサラッとされているよう。鷹を倒して下手から飛び去る様子はもはや狐、谷に吹雪が落ちる所は客席からも驚きが起こる。悲しむ鷹匠のもとに血だらけ帰ってくる吹雪、傷を癒して2回戦はさらに激しく、衣装が鷹は金色、狐は白に宝珠が描かれた衣装にぶっかえり覚醒はアニメのような情景が頭に浮かぶ。2人の激しい舞の一体感、具象的な闘い以上の面白さがあります。勘九郎さんの緩急の見事さ、スッポンからの海老反り退場も凄い。音楽も笛の音が鷹の動作と素晴らしく調和、空に上がっていく吹雪を見送る鷹匠、スッポンの使い方も素敵な素晴らしい一幕。大変に面白いけど、あまり上演されないのも納得です。

2本目んは『俵星玄蕃(たわらぼしげんば)』、『荒川十太夫』に続く講談ベースの新作、脚本協力は神田松鯉師匠です。

配役
俵星玄蕃:尾上松緑(音羽屋)
当り屋十助実は杉野十平次:坂東亀蔵(音羽屋)
大石主税:尾上左近(音羽屋)
中村藤馬:市川青虎(澤瀉屋)
村松三太夫:中村吉之丞(播磨屋)
三村次郎左衛門:市村橘太郎(橘屋)
前原伊助:中村松江(加賀屋)
吉田忠左衛門:河原崎権十郎(山崎屋)

講談でも浪曲でも聞いたことのない演目、『荒川十太夫』が素晴らしかったので、期待したいのですが、そうでもなかった。。。蕎麦屋として身を隠す赤穂浪士たち、道場での玄蕃と十助の酒盛りは冗長。何とか玄蕃を吉良側に付かせまいとして頑張る赤穂浪士たちも、ちょっと痛々しい。最後の両国橋、やけに凛々しい口調の左近君の大石主税が清々し。やっぱり松緑さんは台詞少なめの方が素敵なのかもしれません。

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