「浅草ロック座」で素敵なショーを体験した後は、「日本橋社会教育会館ホール」で「古今亭文菊独演会」を拝見しました。このホールは見やすくて客数も丁度良くて好き。
前座「孝行糖」古今亭ひろ馬
頻繁に遭遇するひろ馬さんですが、顔変わった?髪型のせい?落語らしい色んな商売の売り声、確実に上手くなっている。下げは「えーん、こぅこぅと、こぅこぅと」
「道灌」古今亭文菊
鈴本演芸場、新宿末廣亭での20日間の主任興行を終え、達成感を感じていたのに、この会があるため浸れないという可哀想な文菊さん、落語は客席との一体感が必要というマクラから。二席目が初めての新作落語ということで、一席目は初めて圓菊師匠に習った落語、初めてシリーズ。前座の定番、あまり笑えない落語ですが、ここまで面白くできるのが凄い、粗茶のやり取りだけでここまで笑いを取れる落語家がいるのか。下げは「角が暗ぇから提灯借りに来た」
「優しい味」古今亭文菊
林家きく麿師匠の新作落語のネタおろし、普段新作をやらない落語家にきく麿師匠の新作を演じてもらう企画の一環だそう。優しい味のスープを提供しているレストランにて。扇子でスプーンの所作をするのは初めてでしょう。優しい味のスープが大好きな吉田さんは、今日も後輩のもじゃバード(旧おかまもじゃ)、かかとちゃん(名前だけで爆笑)を連れてレストランへ。オネエが主役の落語を情感豊かに一生懸命演じる文菊さん、オネエと文菊さんの相性最強でモンスター誕生、爆笑し過ぎて涙が止まらない。「教わったようにやってるだけなの!」とたまに心の声が溢れ出るのも楽しい。優しい落語ね、と言われ、面白い落語って言ってください!と普通に反論する馬石師匠は容易に想像できる。きく麿師匠と違い、無駄に想像力を刺激する文菊さんの語りのため、オネエの三人が「辛いこと多いよね」と悲しんでる場面は余計な涙を誘う。その後の「あるあるあるあるアルデンテ、一本筋が通ってます!」「ないないないナイアガラ」とギャグの下らなさのギャップに悶絶。「こんなことやるために落語家になったんじゃない!」という溢れ出す叫びにまた爆笑。「わかるわかるの若侍」も良かった。薄々「優しい味」は褒め言葉ではないと気付いてはいましたが、下げは「そのスープ、飲んでごらんなさいな、優しいだけで、美味しくないの」と身も蓋も無し。今までの人生で一番笑い泣きした、記憶に残る衝撃的な一席でした。
「小言幸兵衛」古今亭文菊
開口一番「抜け殻になりました…」の一言でしたが、むしろ脱皮したばかりのぬるっとしたニュー文菊さんが見えた。その後も、3、4年前に新作の話が来たらきっと断っていたという自分の中の変化についてのとても素敵なお話。理不尽の国から理不尽を広めに来た人という圓菊師匠の厳しい修行、師匠が亡くなった後の第二の師匠による修行、自分の信念を固めたり壊したりしながら、自分で思うようにやってきたのではなく、実は流れに乗っていただけ、とか色々なことに気づいてきたという。新作は絶対駄目だと仰っていた圓菊師匠も今なら許してくれるんじゃないかな、という話に、また泣きそうになりました。三席目はがっつり古典で。何だか愛嬌のある幸兵衛、豆腐屋の啖呵も奮っていますが、やはり最後の幸兵衛が歌舞伎がかるところが楽しい。「(新作)クセになっちゃうかも」と仰っていましたが、年に一度くらいは聞きたいかも。奇跡のような舞台に立ち会えて本当に幸せな1日でした。
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