
日本橋公会堂で「第58回豪華浪曲大会 一期一芸」を通しで拝見しました。開場前から大行列、チケット完売には驚きました。夜の部は若手が活躍「全員ネタおろし」です。
まずは企画「先祖の一節さわり集~根多卸し先祖返り~」から。進行は昔の浪曲に詳しい広沢菊春さん。
「恨みの血の雨」富士琴哉(初代三河家圓車/ドンドン節)
「大場の久八」玉川わ太(二代目玉川勝太郎)
「稲川出世角力」天中軒かおり(初代天中軒雲月)
「栗本家騒動」 玉川き太(初代京山恭為)
「高橋お伝」玉川絹華(初代小金井太郎)
当時の新作らしき「栗本家騒動」は短い時間の中でも場面展開が多く意味不明で面白い。聞く機会はないかもしれませんが、全貌が気になります。
「花のお江戸の一心太助」東家千春/曲師:沢村理緒
自称「宇宙一の美人浪曲師」、始めて拝見する方、とても明るく素敵な雰囲気。大久保彦左衛門のクソじじぃな表現が楽しい。ちゃっかり頭の勝負で知恵伊豆にも勝利してしまう彦左衛門が主役なのでは。
「女殺油地獄(原作・近松門左衛門 脚色:土居陽児)」真山隼人/曲師:沢村さくら
歌舞伎や文楽でもお馴染みの演目、かなり端折っているので、知らないと筋が分かりにくいかも。豊島屋お吉が与兵衛に刺される部分は大熱演。
三味線ギター浪曲「黙阿弥維新 ~ある女形への哀歌~」天中軒景友/曲師:広沢美舟
幕末から明治にかけて活躍した女方の歌舞伎役者、澤村田之助の話、最終的には脱疽で手足を切断してなお舞台に上がり続けるという、事実も元にした壮絶な内容。道具形の長谷川勘兵衛と戯作者の二代目黙阿弥も努力と苦悩もグッとくる。景友さんとギターと広沢美舟さんの三味線が想像以上にマッチしており、抜群に格好良い。
「だくだく」港家小そめ/曲師:沢村博喜
楽しみにしていた落語「だくだく」の浪曲化。沢村博喜さんの脚色が上手い。八五郎の悲しい過去も全て「つもり」、最後の熊吉が八五郎家へ泥棒に入る場面はテンポがもう少し良ければさらに面白そう。小そめさんも素敵でしたが、富士綾那さんで聞いてみたい。太福さんの「三味線が入るとより下らなさが増して素晴らしい」という感想に納得。
「佐倉義民伝 甚兵衛渡し」国本はる乃/曲師:沢村道世
没後10年、国本武晴師匠の十八番だそう。下総国印旛郡公津台方村の名主佐倉惣五郎と渡し守の甚兵衛の話。惣五郎が結局どうなったのが気になりますが、良いお声で迫力ある舞台。内容は辛い演目ですが、豪華浪曲大会のトリにふさわしい華やかさがありました。素晴らしい。

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