十二月大歌舞伎 第三部『舞鶴雪月花』『天守物語』歌舞伎座

歌舞伎座で「十二月大歌舞伎 第三部」を拝見しました。一本目は、十七世中村勘三郎(俳名「舞鶴」)のために書き下ろされた舞踊劇『舞鶴雪月花(ぶかくせつげっか)』です。

配役
桜の精/松虫/雪達磨:中村勘九郎(中村屋)
松虫:中村長三郎(中村屋)

女形が少し違和感のある「上の巻 さくら」から、「中の巻 松虫」、長三郎君はのんびりながらも勘九郎さんのリズム感を引き継いでいるのかと思われる踊り。秋の寂しい雰囲気に、せっかく再会した父松虫との出会いと別れが悲しい。「下の巻 雪達磨」は文句なく楽しい舞踊、舞台に置かれた、炭団屋の娘が作った大きい雪だるまから手が生え、足が生え、変異した雪だるま登場。ポスターの雪だるまよりも化粧が大胆でオバQっぽさも。詞章も滑稽で、娘への熱い思いと太陽で溶けてしまうものの、最後は下がるセリからジャンプして娘への執着を見せるのも楽しい。きっと娘が再び雪だるまを作ったら復活するのだろうと思うと少し幸せに思える雪だるま。

2本目は泉鏡花作の戯曲『天守物語(てんしゅものがたり)』、1年前と富姫と亀姫の配役を逆にして。

配役
富姫:坂東玉三郎(大和屋)
姫川図書之助:市川團子(澤瀉屋)
亀姫:中村七之助(中村屋)
小田原修理:中村歌昇(播磨屋)
侍女撫子:中村歌女之丞(成駒屋)
侍女桔梗:中村芝のぶ(成駒屋)
侍女女郎花:中村鶴松(中村屋)
薄:上村吉弥(美吉屋)
朱の盤坊:中村男女蔵(滝野屋)
舌長姥:市川門之助(瀧乃屋)
近江之丞桃六:中村獅童(萬屋)

緞帳の満月が浮かび上がる趣向で、最後は三日月に、一気に幻想の世界へ引き込まれる良い演出。腰元の中には芝のぶさん、鶴松君も。秋草釣りに花火線香、鶴松君の最近の可愛らしさは恐るべし。吉弥さんの薄は、前回同様、キリッとした雰囲気と茶目っ気が素敵。玉三郎さんの富姫はもうこの世のものではないと断言できるほどの雰囲気、歩く時も数センチ浮いていそう。後ろを向き、こちらを振り返る際の立ち姿の優雅さに驚愕。ユーモアのある台詞も効果倍増で、美しいのに加えて面白いのが凄い。七之助さんの亀姫とのブラックな戯れはニヤニヤしながら拝見する他なし。ぼろぼんな男女蔵さんと門之助さんの不気味ではありますが、化物の感覚で陽気な様子も良い。そして、図書之助役の團子君がはまりやく、スマートな体型に涼しげなお顔で説得力は十分。最後の急に登場する木彫り職人、近江之丞の存在感はやはり軽いものの、全体を通して幽玄で夢想感が素晴らしく、今年最後に完璧に相応しい『天守物語』でした。

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