
歌舞伎座で「猿若祭二月大歌舞伎 夜の部」を拝見しました。1本目は『壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)阿古屋』です。
配役
遊君阿古屋:坂東玉三郎(大和屋)
岩永左衛門:中村種之助(播磨屋)
榛沢六郎:尾上菊市郎(音羽屋)
秩父庄司重忠:尾上菊之助(音羽屋)
直前にビールを飲んだためか、琴を弾くの前から既にお手洗いに行きたくなり集中できず。しかしながら、菊市郎さんの榛沢、種之助君の岩永も良い。ジャンプ力が凄いね。何の不安も感じない、夢想で無双な玉三郎さんの阿古屋。夢の中にいるようにぼんやり見てしまったのは勿体なかったかも。
2本目は江戸時代中期に実際に起こった江島生島事件を題材にした長唄連中による舞踊劇『江島生島(えじまいくしま)』です。
配役
生島新五郎:尾上菊之助(音羽屋)
旅商人:中村萬太郎(萬屋)
中臈江島/江島に似た海女:中村七之助(中村屋)
小舟上での小鼓を持った歌舞伎役者の生島と江戸城大奥に仕えた江島とのしっぽりとした場面から、生島新五郎が流罪となった三宅島へ。狂った男が幻を見るという設定は『二人椀久』を連想させますが悲しくも少し喜劇的な展開。尾上菊市郎さん、中村芝のぶさん、坂東やゑ六さんという素敵な海人に揶揄われる生島が切ないですが、生島に絡まれ終始困り顔の、最後は商売物の着物まで奪われ踏んだり蹴ったりな旅商人に苦笑い。
3本目は落語でもお馴染みの『人情噺文七元結(にんじょうばなしぶんしちもっとい)』です。
配役
左官長兵衛:中村勘九郎(中村屋)
女房お兼:中村七之助(中村屋)
長兵衛娘お久:中村勘太郎(中村屋)
手代文七:中村鶴松(中村屋)
小じょくお豆:中村秀乃介(播磨屋)
遣手おかく:中村歌女之丞(成駒屋)
家主甚八:片岡市蔵(松島屋)
鳶頭伊兵衛:尾上松緑(音羽屋)
和泉屋清兵衛:中村芝翫(成駒屋)
角海老女将お駒:中村萬壽(萬屋)
「吉原角海老内証の場」、勘太郎君のお久の芝居の毛色が他の役者と違って感じるのは若いからか。妙な大人っぽさ、台詞の丁寧さが気になる。「本所大川端の場」、文七役の鶴松君がとても良くてグッと来た。ニンがぴったりなのはもちろん、緩急を付けた落語的なお芝居が非常に巧い。最後の「長兵衛内の場」は、ブチ切れ捲し立てる七之助さんが最高、衝立の横から顔を出す様子もチャーミング。昼の部の『きらら浮世伝』と同じく、やはり中心にいる勘九郎さんがとても素敵、中村屋チームとしての団結が素晴らしい。大団円はハッピーでとても後味の良い舞台でした。
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