2020年3月10日にオープンした日本料理店「赤坂 おぎ乃」にお伺いしました。「京都嵐山 吉兆」「銀座 小十」で経験を積まれた荻野聡士さんが親方を努めます。2年ほど前に「銀座 奥田」で荻野さんの料理をいただきましたが、当時31歳の若さで、よくこれほど枯淡な料理が作れるものだ!と驚いたのを覚えています。
まずは端午の節句に因み、厄払いの「菖蒲酒」をいただきます。青い香り、体の中から清々しいです。
「ホワイトアスパラのすり流し、トマトゼリー」
ホワイトアスパラの存在をしっかりと感じ、中にも荒く刻んだアスパラ。とても美味しい。甘味、苦味、酸味の調和、隠し味に太白胡麻油を加えており、丸いお味に。こういう感覚が素敵だなと感じます。
「噴火湾毛ガニ、バフンウニ、黒酢ジュレ」
珍しくもない組み合わせですが、旨い。素材も上質なのに加え、黒酢が効いています。何事にも調和や秩序は大事ですが、荻野シェフの感性はお笑い芸人、芸術家など多様な顔を持つお父様、片岡鶴太郎さんの血によるものも大きいはず。
「あいなめ、葛豆腐の椀」
引き立ての鰹節をたっぷり使ったお出汁、香りが豊潤ですが、嫌味なく、とても綺麗な味わい。良い意味で主張のないアイナメとの組み合わせもクール。最近あまり見かけない個性を感じる椀でした。
「コチ、アオリイカ、赤貝」
刺身も抜群。力のある食感と初夏らしい爽やかな甘味が抜けるコチ。アオリイカは熟成させず、包丁の入れ方で柔らかくねっちりとした旨味を感じさせます。
続いては中央に設置された焼き台が活躍。藁焼きです。
店内に漂う香りが、むぉう、たまりません!
「鰹の藁焼き」
時期的に脂の控えめな鰹ですが、素材の味が強い。これも定番料理ですが、調理する方によって何でこんなに味に差が出るのか不思議です。普通の料理を普通以上に美味しく作れる人って尊敬します。
「ノドグロ炙り」
旨い!一口目のインパクトが凄いです。おそらく一番脂の乗る部分、皮は炭で炙って。
「稚鮎の天婦羅」
大サイズの稚鮎に胡瓜の帽子。サクサクのスナック感覚ですが、苦味も効いた大人の味。
「太刀魚、コシアブラ、アオサのソース」
横浜小柴の2kgの大サイズ。この辺から同席した方々と盛り上がってきて、お酒も入ってきて、味の記憶が薄れていきます。。。
「八寸」
ここで八寸来たっ!鰻、平貝、山菜、奄美大島のもづく、碓氷豆の茶碗蒸し、卵焼き、タコ、鯛の粽など。飾りつけは菖蒲。うおっー、粽ずっと食べたかったんで喜びます!地焼きの鰻はパリパリ、タコは柔らかで旨い。荻野シェフ、やっぱセンス良いわー。
「伊勢海老の香煎揚げ」
彼奴、記憶無し。。。ただ旨かった。。。
「尾崎牛、筍」
尾崎牛はロースとヒレで、すき焼き風。筍は食感を残すため輪切りで火を通されていました。
「飛竜頭」
箸休めもけっこうしっかり。コースのボリュームが多いのは嬉しいです。
「鮑の炊き込み御飯」
これで終わりません。
「ノドグロの炊き込み御飯」
なんと2種類。全く違った炊き込み御飯を2種類出す日本料理店は初めてかも。荻野シェフがご飯好きだからだそうだが、私も。気が合いそう。土鍋は信楽雲井窯の中川一辺陶氏のもの。この土鍋を使ったご飯は何度かいただいたことがありますが、美味しかった記憶しかありません。
力強いつくね芋(大和芋)のトロロ、肝のソースを合わせて。
鮑と山芋ってナイスコンビ。
新玉ねぎも入って、間違いの無いご飯、美味しいに決まっている。
両方2杯ずついただきました。まだまだ食べられましたがね。
「胡麻のブランマンジェ」
デザートも作り込んであります。極滑らかな舌触りですが、胡麻の風味が強く美味しい。
「ココナッツアイス、天使音メロン」
最後は「銀座 奥田」と同じ美味しいメロンとアイスクリーム、温かい阿波番茶でほっこり。
いや〜、良かったです。私の勘は間違っていなかった。料理の値段は上がっているとはいえ、2年前より満足感も上昇。荻野シェフ、恐るべし33歳です。そして何なんだろう、この朗らかで上品な魅力的性質は!育ち方が良かったのかな〜。料理は人ですから、人柄はとても重要です。有名店出身だと、その店の料理に引きずられているなと感じることは多いですが、ちゃんと荻野シェフの個性を感じられるのも素晴らしい。ご自身で頑固と言われるだけはあります。
そしてカウンター7席(個室は現在未使用)ながら親方含め4人の料理人がいるのも良い。やはりある程度料理人が多い方が、しっかり仕事ができるもの(銀座 小十の厨房を見させていただいた時は若い料理人が犇めき合っており驚いたものです)。オープンしたばかりで、こんな状況になり、今は予約も取りやすいですが、そのうち難しくなるかも。日本料理界の尾上右近、今後が本当に楽しみです。またお伺いさせていただきます。ごちそうさまでした。
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