イノベーティブ・フュージョン「虎ノ門 虓」虎ノ門

2019年5月に虎ノ門某所にオープンした「虎ノ門 虓」にお伺いしました。佐藤慶シェフの料理は以前の「銀座 盡」時代から大好き。唯一無二の感性、精神世界から生み出される料理に、いつも心踊り、いつも感銘を受けています。

「フュメ・ド・ポワソン」
フュメ・ド・ポワソン
ある意味、佐藤シェフの魅力を最も感じられる料理の1つ。こんなご時世なので、殺菌作用のあるお茶をプラスする優しさ。あーっ、またここに帰ってこられた嬉しさが心の奥から込み上げます。大好きな鮨店「さわ田」でいただく一貫目と同じ感覚。

「トマトのカッペリーニ、ムラサキウニ」
トマトのカッペリーニ、ムラサキウニ
上には素晴らしい味わいの「はだての生うに」、これほど気品のある雲丹は他には無いのではないでしょうか。ただ、雲丹だけに頼らず、料理としての完成度も素晴らしい。

「若鮎フライ」
若鮎フライ
滋賀県産、琵琶湖ではなく、その少し北側にある余呉湖の鮎。滋賀県って琵琶湖以外に湖あったんですね。さっくりしたごく軽やかな食感と風味に、肝のどっしりとしつつも切れのある苦味のバランスが見事。旨いです。

「太刀魚のブイヤベース」
太刀魚のブイヤベース
絶品。こんな澄んだブイヤベースは初めて!油など余分なものは全て除去されているそう。一般的に洋食は足し算、和食は引き算と言われますが、そう単純な話ではありません。葛、生姜のみで仕上げられた美しい太刀魚はとてもジューシー、生姜が素晴らしいアクセントになっています。感じる旨味の種類として、バズーカ砲(ピストル)に打たれたようなや、ぶん殴られたようなや、強く抱擁されたような等色々ありますが、佐藤慶シェフの料理は研ぎ澄まされた超鋭角的な刃物で刺されるような旨味で、同調するように此方の感覚も研ぎ澄まされる。深い刺激に泣きそうになります。

「パン」
パン
シグネチャーともなっている、自家製バターと、その時に出た乳清(ホエー)で作った自家製パン。こんなに美味しいパンを知りませんし、パンだけで1つの完成系の料理になっているレストランを私は知りません。泣いちゃう。

「焼鳥」
焼鳥
続いても定番となっている焼鳥ですが、初めていただく趣向。赤ワインで仕上げた心地良い弾性と噛んだ時に溢れる肉汁の鶏肉に、卵の火入れがやば過ぎるし、下にアボカドが隠れているのですが、この使い方も凄いな。

「アシアカエビのグラタン」
アシアカエビのグラタン
蟹クリームコロッケなどの洋食メニューも「虎ノ門 虓」の特徴。あのクリームの重みがグラタンの良さかと思っていたのですが、これほどピュアで淑やかなグラタンは初めていただきました。殻も美味しくいただけ、名作アニメ『ふしぎの海のナディア』を思い出しました。心のオルゴールが開きそうです。

「パン」
パン
2種目のパンも定番ですが、以前より軽快なお味になっていて、最初のパンとの違いも出るし、料理に合わせるのにも良い。グラタンとパンって絶対です。

「豚バラ、安納芋ソース」
豚バラ、安納芋ソース
珍しい豚肉を使った料理。豚とさつま芋は間違いない相性ですが、この結合の仕方は官能的。下に纏わりつく旨味、表現力が素敵。纏っているのか纏われているのか。

「白飯、浅利の椀」
白飯、浅利の椀
銀座時代、そして「虎ノ門 虓」でも最初はご飯の上に魚を乗せて炊き込んでいたましたが、現在はごまかしの効かない白飯での提供。艶々の水分多めの炊き上がりはメガヒット。というか煉瓦製のへっついと釜がやばいし、拘るポイントも方法も異常、超弩級、生一本の異能。澄まし汁は出汁は使わず麦味噌と浅利のみ。何でこんなに旨いのでしょう。

「喉黒、出汁巻き卵」
喉黒、出汁巻き卵
出汁巻きは鮨店で修行経験のある竹田氏の見せ場でした。輝いてます。喉黒の火入れはもちろん、酸の利かせ方は、もう佐藤シェフの料理でしかない。

「海老、貝出汁カレー」
海老、貝出汁カレー
カレーは何度かいただいたことがあるのですが、この仕様は初めて。ややグリーンがかかっており、ちょっと癖のある味わいを想像しましたが、大外れ。魚介の旨みに溢れる寛容な味わい。

もちろんお代わり大盛りでいただきました。このカレーの海なら溺れ死ぬのも天国だわ。

さらに、もう1盛り、変形リゾットタイプまでいただいて、幸せしかない。

「カステラ、メロン」
カステラ、メロン
前回もいただいたことのある、そして永遠に食べられるエアリーでナチュラルなカステラ、ブルゴーニュのドメーヌ・ミッシェル・グロの1964年のマールに漬けたメロンも秀逸でした。

「虎ノ門 虓」オープン当初は、例えば「銀座 盡」時代は使わなかった和出汁、醤油を使ったりすることに以前の店との違いを感じましたが、今や調味料とかいうことではなく「虎ノ門 虓」のコース料理になっていて、そして以前だって素材感は素晴らしかったですが、さらに磨きがかかっています。「味」にも色んな表現の仕方があり、絵画などの作品と同じで、人により好みはありのは当然ですが、佐藤シェフの料理は壷だわ。篠田桃紅さんの作品みたいな。

舞台のようなオープンキッチン、緊張感を保ちつつ、静かに躍動する料理人4人と客席をフォローするサービス1人、5人のチームワークも凄く良くなって、これからどういう進化を遂げるのかも凄く楽しみ。哲学や能楽など素晴らしい古典に触れた時のように想像力が花開く、本質を感じられるレストランです。ごちそうさまでした。

そして、余韻で眠れなかった次の日にも楽しみがあります。
虎ノ門 虓のお土産
今は銀座でも購入できるようになったお土産。

「カヌレ」
カヌレ
湿度のせい?いつもよりソフトな仕上がりでした。1つずつ大切にいただくつもりでしたが、我慢できず。。。写真を見るだけでラム酒とバニラの香りが明確に蘇ってきます。

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