三谷文楽『其礼成心中』渋谷パルコ劇場


半年ぶりの文楽は三谷文楽『其礼成心中』から!前から3番目、中央付近のベストな座席で拝見できました。公演時間2時間、休憩無し、最初に三谷幸喜(人形)さんの挨拶から始まり。三谷さんもしっかりマスクを着用されていました。

床は上手側ではなく、舞台後方上段、主遣いも黒衣なのは、コロナ関係無く、元々こういう演出のようです。近松門左衛門の『曾根崎心中』が大当たりした元禄16年、徳兵衛お初が自殺した天神の森の入り口で饅頭屋を営む夫婦のお話です。

第一場「天神の森 半兵衛、心中に水差すの段」、語りは竹本千歳太夫から。客席が広いし、床が奥にあるのでマイクを使用されているよう。千歳太夫さんの情感と声量豊かな語りとマイクはちょっと違和感有るかな。『曾根崎心中』に触発され自殺に来た六助おせんに水を差す天神の森パトロールの饅頭屋半兵衛。「逆ギレ」「カップル」「ネイルサロン」「ロミオとジュリエット」「スカイダイビング」など通常の文楽ではあり得ない現代語、外来語も多様されます。ほっておくとすぐ自殺しようとする六助おせんの動きを、背景を動かすことで表現する演出も面白い。人間が演じるよりも剽軽さが増して良いです。

第二場「饅頭屋夫婦 人助けの段」、上空を飛ぶ可愛い閑古鳥から。語りは大好きな豊竹呂勢太夫さん!先ほどの2人を上手く説得できたこおとから相談所(饅頭のお土産付)を始めます。第三場「繁盛曽根崎饅頭 ライバル出現の段」、曽根崎饅頭は大当たり、1個8両(50万円くらい?)でもバカ売れです。家にミラーボールまで設置され、着物も閑古鳥も豪華に。娘のおふくは第二場から第三場の間に一気に成長し、人形の顔は何故か三枚目の「お福」です。世間では近松の新作『心中天網島』が大当たり、網島で天婦羅を売り出す店が大当たりし、曽根崎には再び閑古鳥。『心中天網島』の最後「名残の橋づくし」がしっかり語られるのは嬉しいですね。史実ではこの間に17年経っているので、子供が育つのも納得。

第四場「大近松 半兵衛直訴の段」、大詰めの第五場「半兵衛おかつ 淀川入水の段」と続きます。実は天婦羅屋の息子と良い仲になっていたおふく、それを3連発で小出しに告げられた時の両親、というか千歳太夫さんの「えっ〜〜」というリアクションに爆笑。その後「器量は中の下」「心中は美男美女がやるもんや」など両親に糞味噌にされ悶絶するおふくがとても可愛い。場面は変わった淀川に入水(それなり心中)する饅頭屋夫婦、水中の表現が楽しい。水中マスクで手にライトを持つ謎の人物も登場。夫婦が入水するのも近松はこっそり見ていたようですが、作品は完成しなかったみたい。色々ありまして、最後はおふくが待つ、明かりの付いた家に帰る夫婦の睦まじい背中にほっこりでした。通常の公演では無いカーテンコールも良かったです。

三谷幸喜さんらしい小さな笑いに埋め尽くされた愛すべき文楽作品。「心中」と付いていますが登場人物が誰も死なないのも素敵。文楽は悲劇が多いですが、コメディとの相性も抜群。語りも凄く聞き取りやすく、そして親しみやすいハッピーエンドで、初めて文楽を見る方にも最適。来月の国立劇場の文楽公演も楽しみです!

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