江東区文化センターで「令和6年12月文楽公演 第一部」を拝見しました。
配役
1本目は人形ならではの表現が楽しい『日高川入相花王 渡し場の段』、やっぱり清姫は蛇身になりたくてなった訳ではないと思うと悲しい気持ちになります。
2本目は劇作家の木下順二作、昭和30年に文楽で初演された新作『瓜子姫とあまんじゃく』。千歳太夫さんの一人語りですが、伸び伸びとしたお声が物語に合っている。語尾も過去形を多用した物語調なのも新鮮。最初に下手に登場する鶏、鳶、鴉は瓜子姫の友達。機織りの音を太夫と三味線で表現するのも楽しい。途中で登場する山父も不気味ながらも愛嬌があり可愛い。後半はややテンポが悪く感じるものの、終始ほのぼの、最後は下手の御簾からあまんじゃくが登場するサービスも。「瓜子姫」の話には様々あり、東日本では最後は姫が死に、皮を剥いで姫に成りすまし、老夫婦に姫を食べさせてしまうというとんでもない内容もあるそう。文楽ではあまんじゃくが子供(狸)の悪戯のような設定になっているのがとても良い。
3本目は『金壺親父恋達引(かなつぼおやじこいのかけひき)』。フランスの劇作家モリエールの戯曲『守銭奴』を井上ひさしさんが文楽のために翻案した新作。「新版歌祭文 野崎村」艶容女舞衣 酒屋」「菅原伝授手習鑑 寺子屋」などの演目のパロディもふんだんに取り入れられ、口語の詞章で分かりやすく、文句なく笑える演目。緩い演目ですが、鶴澤燕三さんの三味線が舞台をしっかり引き締める。掛け軸が「質素倹約」「金金金金仲谷」「昼の段」と変わるのも楽しい。「昼の段」の三十両の話は落語の「持参金」を思わせる内容。金左衛門も金のことしか考えていませんが、思考が超ピュアで憎めない存在。最後の実は親子だったという予定調和、ハッピーエンドが素敵でした。来年2月の通し狂言『妹背山婦女庭訓』も非常に楽しみです!
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