2月定例公演 近代絵画と能 狂言『鶯』能『草薙』国立能楽堂

近代絵画と能 狂言『鶯』能『草薙』
「おかしやうっちー」でお菓子をたらふく食べた後は国立能楽堂へ。狂言『鶯』と能『草薙』を拝見しました。

狂言「鶯 (うぐいす)野村萬斎(和泉流)」
先日も拝見した野村万作さん、野村萬斎さん親子の共演。今回は萬斎さんがシテの梅若殿の家来役。物語はシンプルで鶯が大好きな若殿のために家来が、鶯の飼主からどうにかして鶯をゲットしようと頑張る話。ですが、もちろん上手くいきません。最初は籠に入った鶯を勝手に持ち去ろうとして怒られ、続いて自分の刀を掛けて鳥刺しに挑戦します。鶯のゆらゆらする動き意外とリアルでびっくり。小さな籠に入った鶯ですから飼主はチャンスは1回だけと言いますが、イナゴすら取ったことがないのだから20回、ダメなら15回、それもダメなら5回、せめて2回と往生際の悪い家来の必死さが楽しい。鳥刺しの場面でも超至近距離から刺そうとして、やっぱり怒られます。結局腰刀も主人から預かっていた刀も取られてしまい、ポツンと残される家来。面白いけど寂しく、悲しいけど面白い。最後は独断場。

奈良の高天彦神社の前にある鶯宿梅(おうしゅうばい)の話。寺の小僧が死んでしまったのを、師が悲しんでいたところ梅の木に鶯がきて、「初春の あした毎には 来れども あはでぞ帰る もとのすみかに」と鳴いたという。家来のそれを本歌取りした歌が最高。「初春の 太刀も刀も鶯も ささでぞ帰る もとの住みかに」。爆哀。負けるな家来!萬斎さんの大きな動きで最初は笑って、最後の哀愁への緩急が素晴らしかった。人生における風刺が効いた演目、明日は我が身でございます。

能「草薙 (くさなぎ)藤井雅之(宝生流)」
続いての「草薙」は宝生流でしか上演されない稀曲。「近代絵画と能」というテーマで、絵画は安田靫彦さんの「草薙の剣」。
「草薙の剣」安田靫彦
草を薙っている所でしょうか。あまり強そうに見えない大和武尊、お顔が猿っぽくて愛嬌あります。色使いや衣服の形、柄も面白い。側にいる凄く心配そうな女性が橘姫です。

前シテは花売り、後シテは大和武尊、ワキは恵心僧都(源信とも、平安中期の天台宗の僧)。熱田神宮に17日間、参籠し最勝王経を講じに来ており、花売り夫婦(実は大和武尊と橘姫)も私たちは最勝王経(金光明最勝王経、法華経・仁王経とともに国家鎮護の三部経)を求めていたと言う。仏教の僧が神社に、神様がお経を求めるというのは本地垂迹説を反映しているという。正確な製作時期は不明ですが、色々大変な時代だったのでしょう。

内容は非常に分かりやすい。前半は花売りと僧都との草花尽くしの掛け合いから、花売りの正体が明かされ、すさまじい風雨と共に白鳥となり消えていきます。その後、所の者の大和武尊についての説明が入り楽しい後半へ。素戔嗚が倒した八岐大蛇が二村山(ふたむらやま)になったという神話的詞章も面白い。橘姫は台詞はほとんどありませんが、十分に美しい存在感。最後は駿河の国で夷狄に騙され火に囲まれたのを草薙の剣の力で撃退したことは語る剣と扇を使った勇壮な舞で、見応えあります。まさかこの内容の大和武尊に共鳴できる訳もなく、それほど感動はありませんでしたが、稀曲を拝見できた満足感はありました。来月拝見する予定の『当麻』も楽しみです。

コメント

  1. […] 観賞 一.「近代絵画と能 狂言『鶯』能『草薙』」国立能楽堂 二.歌舞伎「二月大歌舞伎 夜の部『人情噺文七元結』『道行故郷の初雪』等 」歌舞伎座 三.文楽「二月文楽公演 第一部 […]

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