「古典×現代2020-時空を超える日本のアート」国立新美術館


国立新美術館で開催中の「古典×現代2020-時空を超える日本のアート」を拝見しました。他美術館同様チケットは事前に時間帯を設定して購入、体温測定有り、マスク必着。8組の現代アーティストの作品と古典作品の対比により、新たな魅力の発見を試みるユニークな展覧会です。

「仙厓x菅木志雄」
出光美術館でもお馴染み、私も大好きな仙厓義梵の円相(饅頭)画「これくふて 御茶まひれ」との対比。インスタレーションは地面に置かれた作品で□○と、吊り下げられた作品で△、仙厓の有名作品「□△○」の「ユニバース」を表現していると想像されます。もしかするともっと深い意味があるのかもしれませんが、それほどビビッとくる驚きはありませんでした。

「花鳥画x川内倫子」
こちらは対比というよりは、写真家の川内倫子さんの作品がとても良かった。動植物や風景の明るいタッチの作品群「AILA」、ムクドリや火花、太陽などの闇と光を感じる作品群「Halo」、溶かした鉄を壁に放り投げて火花を散らす映像も迫力ありました。特にトルコ語で大家族という意味の「AILA」が好きで、生まれたての人や動物など、単に可愛く撮影されておらず、確実に死も感じさせるのが素晴らしい。生命の、地球の群像劇みたいな。絵と違って、写真は一瞬を捉えなければいけなくて、洞察や運も凄く大事という点で、俳句と似ている気も。この方、写真の神様に愛されていると思わせる素敵な作品たちでした。

「円空x棚田康司」
「一木造り」での技法が共通する2人の展示。円空は素晴らしいですが、初めて拝見する気がする棚田康司さんの作品があまり好みではなかった。お顔の表情でしょうか。現代彫刻家だと松本市美術館で拝見した飯沼英樹さんの作品が印象的だったことを思い出しました。円空はもはや仏像の作成にかける思いからして次元が違います。同じ木がから切り出した三像(十一面観音、善女竜王、善財童子)のうち、頭のとんがった善財童子の表情とか最高。愛知県音楽寺の「荒神像」は、キン肉マンに出てくる悪魔超人「ザ・魔雲天」を思わせる仏像なのだが、恐ろしさより、愛嬌が勝る。アンバランスな手の表現とか素晴らしいわ。毎度、円空の果てしない慈愛を感じさせられます。合掌。

「刀剣x鴻池朋子」
繋いだ巨大な牛皮に絵を描いた2枚の「皮緞帳」の間を白長髪の銀色顔が行き来する。左皮は生命力のある絵で、右皮はその逆か。死んだ牛の皮に、生きているように見える動物の絵を描く非現実感。刀剣と合わせた「切る」というキーワードは「kill」にも繋がる。『皮緞帳』を横から見た時に、チラッと覗き、そして此方から彼方へ向きを返る顔が、此岸と彼岸のようで面白い。個人的に刀剣はあまり興味が湧く対象ではないのですが、矢尻などの武器に使用されてきた黒曜石の欠片たちは、黒の中に無限の色を感じられてとても美しい。アーティゾン美術館で開催中の『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×鴻池朋子 ちゅうがえり』も見に行きたい。

「仏像x田根剛」
この展示が一番好きでした!今年開館した「弘前れんが倉庫美術館」の建築デザインで知っていた田根剛さん。滋賀県東部の西明寺(さいみょうじ)に伝わる日光菩薩、月光菩薩と田根さんのライティングを合わせた作品。暗い展示室、BGMに天台声明(ねむり節)が流れるの中、2対の菩薩が消えたり現れたり。見せないことが想像力を掻き立てる妙味。足元から2対の菩薩が徐々に姿を表すタームが最高!鎌倉時代中期に作られ、最近修復が完了したという仏像の力強さはもちろんありますが、ただ展示されているよりも、ずっとずっと長く見ていられる素晴らしい作品。

「葛飾北斎xしりあがり寿」
「ちょっと可笑しなほぼ三十六景」、これは純粋に笑える作品。超わかりやすい間違い探し、楽しい!!

「尾形乾山x皆川明」
皆川明さんのファッションブランド「ミナ・ペルホネン」は、ブランド名からも明らかなように、北欧色がかなり強いイメージ。乾山のパターンも凄く可愛くて、狙いとは違うかもしれませんが、なんとなくパターンが似ているが故に違いが強調されている点が面白いか。「色絵椿分向付」は明確な緑に白抜きの椿、黄色の雄しべで色使いが可愛い、「銹絵染付白彩菊花文反鉢」は鉢の形状自体に菊が連想され、内側外側に菊がびっしり書き込まれています。景徳鎮の南宋青磁氷烈文皿から着想を得た「色絵石垣文角皿」、青緑茶赤紫黒白7色のモザイク模様。ミナ・ペルホネンに随分寄せた作品を選んでいるようですが、江戸時代の作家とは思えないほど現代的です。

「曾我蕭白x横尾忠則」
これはなかなか辛い展示。曾我蕭白と一緒に展示して、どうにかできるアーティストがいるでしょうか?「游鯉図」はなかなかの衝撃、52.7×119.5cmサイズなのですが、その大迫力、推定10mはあろうか。「群仙図屏風」にも鯉は描かれているのですが、比べると赤ちゃんに見えます。しかし、いつ見てもその画力と悪意さえ感じる強烈な表現力に心がザワザワする曾我蕭白の作品。とはいえ「松竹梅図襖」の可憐な梅の絵のような、ほんわかする作品も描けるのに感動。

時間制にはしていますが、そこそこの賑わいで、「葛飾北斎xしりあがり寿」が分かりやすくて人気があるよう。古典という言葉は使わなくとも、生きていく中で歴史の流れから影響を受けていない人間などおらず、芸術の世界に従事する方なら、逃れたくても逃れることができないもの。どう古典と向き合うかという、それぞれの作家の姿勢も興味深かったです。見終った頃には2時間経過、総合的に楽しい展覧会でした。8月から開催の『MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020』も拝見したいと思います。

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