特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」上野国立博物館

特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」上野国立博物館
上野国立博物館で特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」を拝見しました。昨年夏開催予定だったのですが、ここまで延期、緊急事態宣言でこの先一体どうなるのでしょうか?チケットは完全予約制、一番早い9時からのチケットをウェブで予約させていただきました。こうの史代さんの「ギガタウン 漫符図譜」も拝読し、事前準備もばっちりです。

「国宝 鳥獣戯画」は甲・乙・丙・丁の4つの巻に分かれており、最も有名なのは兎、蛙、猿など可愛い動物いっぱいの「甲巻」、続く「乙巻」は擬人化されていない動物、「丙巻」は前半は人物、後半は動物の戯画、「丁巻」は人物の戯画が描かれます。最初に模写を見た後、本物へ。「甲巻」は歩く歩道に乗って拝見、激混みにならないうちに二度拝見しました。他の巻と比べると最も巧い。動物の表情や躍動感はもちろん、背景の植物なども細かく描かれています。戯画ですし、正直、技術的に超絶な訳もなく、作品として本物を見る意味はそれほど大きくないかもと感じる。ただ当時の遊びや風習などがわかるのは興味深く、人間も動物もそれほど違わない、皆仲良くしようね!という単純明快永遠不朽のメッセージを受け取りました。

京都 高山寺所蔵、鎌倉時代に描かれた「華厳宗祖師絵伝 義湘絵 巻第二、第三」が素晴らしかった。義湘は、新羅の僧。仏教を勉強するため来唐した義湘に、港町に住んでいた長者の娘善妙が一目惚れ。真面目な僧なので、思いは受け止められずに帰国してしまいます。どうしもて諦められない善妙はついに海に身投げしますが、龍となり義湘の航海を見守った。という話の絵巻。「国宝 鳥獣戯画」も所蔵している高山寺は、明恵が、華厳宗の研究や修行の場所として鎌倉時代の初めに復興。この絵巻も、明恵上人の発案で制作されたものだという。仏教による女性救済の目的と説明には記載されていましたが、そうは思えないがなぁ。何かもやもやする。連想するのは日本武尊のために海に飛び込んだ弟橘媛とか男を思うあまり蛇になった清姫か。しかし、淡い色の優しさや、絵の緻密さ、救済などとは切り離した物語はとても素敵でした。

気品のある「明恵上人坐像」はかなりリアルに作られているそう。大きなつぶらな目に、高い鼻、赤い唇、絶対ロマンチスト!と思わせる端正で意志が強そうだけれど、どこがあどけなさを感じるお顔。自分の見た夢を記録した夢日記、天竺への渡航を憧れていた上人が、大切にしていたという「龍子」(タツノオトシゴの剥製)、そして子犬の夢をよく見ていた上人が運慶の息子湛慶に作られせた「子犬」などの展示を見て、さらに確信を深くしたのでした。

メインの鳥獣戯画はお手軽軽妙でとても可愛く、売店のグッズも大人気。混み合っていますが、人数制限していなかったらどうなることか。展示作品自体は少なく、滞在時間90分ほど、上野国立博物館は常設展も見事で見応え十分なので、またゆっくりお伺いしたいと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました