『バベットの晩餐会(1987年 監督:ガブリエル・アクセル)』

バベットの晩餐会(1987年 監督:ガブリエル・アクセル)
表参道のフレンチ「ラチュレ」で海亀をいただいてから、また見たいと強く思っていた映画、TSUTAYAでレンタルしか見る方法がないのですが、最寄のTSUTAYAの在庫は3枚でHDニューマスター版2枚、普通のが1枚。もちろんニューマスター版を借りたのですが、何故か再生できず。。。悔しいのでもう1枚のニューマスター版をレンタルしたのですがやはり再生できず。。。最後に普通のを借りたらやっと再生できました!以前見たのは7、8年前で海亀の記憶しかなかったのですが、素晴らしかった!

舞台は19世紀後半のデンマーク、ユトランド。前半、バベットは登場しない。厳格な牧師の父を持つ姉妹マーチーネとフィリパ。マーチーネには士官のローレンスが、歌の上手いフィリパにはバリトン歌手のパパンが好意を寄せるが敢え無く撃沈。これも後々効いてきます。父も亡くなり、あっという間に35年経過したある豪雨の日、パパンの紹介でフランスから亡命してきたバベットが姉妹の家を訪ねます。

「私を雇って下さい」と頼むバベットに「(お金が無いから)雇えません、ただ居ても良いです」と答える優しいマーチーネ、しかしバベットは料理が上手く、食料の値切り方も巧妙、不思議とお金が貯まるように。そんな中バベットが1万フラン(400万円くらいか?)の宝くじに当選。そのお金でフランスに帰ってしまうと不安になる姉妹。そんな中、父の生誕100年を祝う晩餐会で、フランス式のディナーを食べてもらいたいとバベットが提案。その提案は受け入れられフランスに買い出しへ行き、仕入れてきたのは生きた海亀やウズラ、牛の頭など。旨そ〜。

そんな食材に恐れをなした村人は相談して「絶対食べ物の話をしない、味わわない!」と決意、晩餐会には出世したローレンスも参加。料理は海亀のスープから始まりサワークリームとキャベアを乗せたブリニ、ウズラのパイ詰め石棺風(フォアグラ、トリュフ詰め)、チーズ、サヴァラン、フルーツ、飲み物はヴーヴ・クリコ、1845年のクロ・ヴージョ、コニャックなど堪らんですね。最初恐る恐る食べるものの、その味の美味しさに食べるのが楽しくなる村人、食べ方がわからずローレンスをチラ見しながら皆で真似する村人たちが可愛い。食べ物の話は一切しないのですが、表情と白い皿は雄弁に語る。食いしん坊としては、この村人の喜びを隠しそうとしているけど隠せない表情を見てると、めちゃくちゃ嬉しくなる。そしていがみ合っていた友人たちも美味しい食事で関係修復。美味しい食事の力です。

基本とても静かな映画なのですが、くすぐりも多くて飽きさせない。バベットの値切り場面やバベットがフランスに買い出しに行ってる間に劣化した食事、特に晩餐会の場面は、サービスの子供や御者の行動、村人の妙な会話と終始真剣なバベットの対比が楽しい。ちなみにバベットが料理長を勤めていた「カフェ・アングレ」は1802年開店でワインの品揃えが凄かったらしい、「トゥール・ジャルダン」と合併して1913年に歴史に幕。バベットが「カフェ・アングレの12人分のお代が1万フラン」と言っていましたが、ワインまでいれると大げさでも無いのかもしれません。

晩餐会の後、バベットがフランスに帰ってしまうことを確信した姉妹でしたが、バベットは食事の用意に1万フランを使ってしまったので、帰れない、ここに居させてくださいと、告げるのでした。最後のバベットの「貧しい芸術家はいません」という言葉は、常々素晴らしい料理人は芸術家だという持論を持っていたので、刺さった。佳作が多い音楽映画に比べ、料理映画はあまり面白くないものが多い気がしますが、『バベットの晩餐会』は料理映画の傑作。ウズラのパイ詰め石棺風はいつか食べてみたい!

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