シネマ歌舞伎『喜撰』『棒しばり』東劇


雨の日は東劇でシネマ歌舞伎観賞です。一題目は狂言、歌舞伎でもお馴染み『棒しばり』(2004年4月録画)、説明不要の楽しい演目です。

配役
次郎冠者:中村勘三郎
太郎冠者:坂東三津五郎
曽根松兵衛:坂東彌十郎

今は亡き2人の名優による『棒しばり』は絶品。彌十郎さん若っ。舞台に登場しただけで、座内の空気が変わる中村勘三郎さん。主人に披露した「夜の棒」でも棒縛りにされてからも棒の使い方が素晴らしい。主人が出かけてから、棒縛りにされた次朗冠者と両手を縛られた太郎冠者の2人が頑張って酒を食い、良い気分になってからの踊りも秀逸。勘三郎さんのお行儀の悪いけど品のある足遣いが見事。お2人の連携も凄いなー。歌舞伎の場合、狂言よりもさらに、下手をすると単にどたばたしたコントになりそうな演目ですが、泥酔してても縛られていても風格と温かみは損なわれない。主人が帰ってきてからの「はたくしは、、、知りやせん」って無理のある言い訳も、志村けんさんっぽくて、可愛らしくて爆笑。最後は主人への2人の逆ギレで幕でしたが、単に笑えるだけでなく、歌舞伎らしさも存分に味わえる「棒しばり」でした。

二題目は『喜撰』(2013年6月録画)、平安の6人の歌人による群像舞踏『六歌仙容彩』(ろっかせんすがたのいろどり)の中の喜撰法師のパートです。

配役
喜撰法師:坂東三津五郎
祇園のお梶:中村時蔵

長唄と清元の掛け合いによる華やかな春の舞踏劇、喜撰とお梶のクドキ、花錫杖を使った「チョボクレ(願人坊主のような物乞い坊主が卑俗な歌詞を歌い踊る大道芸のようなもの)」、大傘を使った坊主連中による「住吉踊り」、なよっとした女のふりで踊る悪身(わりみ)と様々な種類の踊り分けが大変そう。詞章の7割5分が聞き取れないのは初めて見るためか?3ヶ月のブランクがあるためか?三津五郎氏曰く、お坊さんは上半身が男、下半身が女で踊るのが口伝といいますが、正しく!下心や軽々しさも、確かな技術でしっかりと表現されれば、全く別の感覚となるのが興味深い。途中で、お風呂を沸かしたり、畳を変えたりする踊りなんかもあって見ている方は楽しいですが、踊ってる方は、めっちゃ大変だと想像しますが、表には全く出ず軽みの極致。喜撰の周りを固める坊主達がもの凄い豪華で、今をときめく若手たちが勢揃いに吃驚!松也、梅枝、歌昇、萬太郎、巳之助、壱太郎、新吾、右近、廣太郎、種之助、米吉、廣松、児太郎、鷹之資!!もはや劇中でこの面子が揃うことなんてないでしょうねぇー。

やっぱり名人と呼ばれる方の演技、舞踏は素晴らしいです。2幕で1時間30分程度と短いのも良かったです。しかしながら、やはり自身の目で見て、身体と体感したい歌舞伎です。

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