松竹ブロードウェイシネマ「シラノ・ド・ベルジュラック」東劇


エドモン・ロスタン代表作で1897年にポルト・サン=マルタン座で初演。17世紀フランスに実在した剣豪作家「シラノ・ド・ベルジュラック」を主人公にした作品、東京FMの「パナソニック・メロディアス・ライブラリー」で紹介されたのをきっかけに拝読して以来、一度劇を見てみたいと思っていました。今回の上映は2007年にリチャード・ロジャース劇場で上演されたもの。映画は19時30分開始、こんなご時世だからか観客は20人に満たないのでは。寂しい気もしますが逆に言えば、まるで自宅かのように、もの凄くくつろげる贅沢な環境でした。

配役
シラノ・ド・ベルジュラック:ケヴィン・クライン
ロクサーヌ:ジェニファー・ガーナー
クリスチャン・ド・ヌーヴィレット:ダニエル・サンジャタ

第1幕 ブルゴーニュ座、芝居の場
シラノが劇場に乱入し、芝居を止めさせ、さらにロクサーヌを好きなギーシュ伯爵の手下の子爵を即興の詩を語りながらやっつける場面。シラノの上階からの登場が格好良く、剣技、詩の圧倒的な才能を見せる決闘シーンも素晴らしい。ケヴィン・クライン当時59歳とは思えない身のこなし。結果的に殺されてしまう子爵がちょっと可哀想になりましたが。。。これが普通な時代だったのでしょうか。人気役者のモンフルリーと菓子売りの太った女性も良い感じ。鼻はやっぱり大きいですが、他の部分はめっちゃ男前なシラノです。

第2幕 詩人御用達料理店の場
ロクサーヌに呼び出されたシラノ、ひょっとすると俺のことを!と思いながらラブレターまで用意しますが、実は好きな相手は同じガスコン部隊の新入りクリスチャンで、彼を守ってくれと頼まれてしまうシラノの悲しげな表情が印象的。強がりでシラノが100人切りの武勇伝を語る際に「鼻」を連発するクリスチャンですが、結局はロクサーヌのために協力する2人。笑える部分もとても多く楽しい舞台です。

第3幕 ロクサーヌ接吻の場
ロクサーヌの家のバルコニー下で、シラノがクリスチャンに代わって美しい言葉を重ねる見所の1つ。自分1人で大丈夫と強がりながらも「愛してる」という言葉しか出てこずあたふたするクリスチャンが情けなくも可愛い。素敵な場面ではありますが、どこまでも言葉にこだわる上から目線のロクサーヌに、ちょっとイラつく気持ちも。とっても勝気でチャーミングなキャラではありますが、好きになれないわ。クリスチャンってちょっと馬鹿っぱいけど普通にいい奴じゃん。ド・ギッシュ伯爵を足止めするために、月から落ちた人の振りをするシラノのピエロぶりに爆笑するも、裏に重たい悲しみを感じます。

第4幕 ガスコン青年隊の場
アラスの戦場でも、シラノはクリスチャンになりすまし毎日2通の手紙を送っている。そこの突然あらわれるロクサーヌとシラノの友達の菓子職人ラグノー。クリスチャンに「あなたがもっと醜ければ愛せるのに」とか言って何様だ!シラノはクリスチャンに「ロクサーヌが愛してるのは君だ」と言われ、本当の事を告げようとするも、クリスチャンの呆気ない死によってできず。ロクサーヌとの度重なるキスはゲットしたものの可哀想なクリスチャンでした。

第5幕 シラノ週報の場
一気に15年後、舞い散る紅色の落ち葉が美しくも切ない。この場は原作からかなり変更がある感じ、登場人物も少なくシンプルに仕上げられているのが好感触。ド・ギッシュ伯爵は公爵となり地位も名誉もありますが、自由を選び、詩によって敵を多く作り、貧乏のどん底のシラノを「羨ましい」と言います。毎土曜日、シラノはロクサーヌを訪問しています。しかし恨みを持つ人物に頭に材木を落とされ瀕死のシラノですが、いつも通りロクサーヌに会いにやってきます。ロクサーヌは最後のラブレターをシラノに見せ、それを情感込めて読み上げるシラノ。そこでやっとバルコニーの声も、手紙も、全てシラノのものであったことに気づきます。千人の敵は「虚偽」「妥協」「偏見」「傲慢」など人間の嫌な部分、最後の力を振り絞り無形の相手に剣を振るうシラノは、風車に立ち向かうドン・キホーテのよう。ロクサーヌの腕の中で息を引き取る直前のシラノの最後の台詞、軽い笑顔で放つ「Mon panache」が最高。パナッシュは羽飾りという意味のようですが、ここでは「俺の心意気」と訳すのが定番となっているよう。ケヴィン・クライン最高!

初演から120年たっていますが現代の世の中にも通ずる強いメッセージを放つ作品。笑える場面がとても多い舞台ですが、それだけ悲しみの部分が強調される圧倒的悲劇。最後まで自分を貫いたシラノが最後に残す余韻が素晴らし過ぎます。それを味わうための静かなエンドロール的なのが5分くらい欲しかった。台詞回しやテンポも良く、あっという間の141分でした。行く予定だったお能が無くなったのは残念でしたが、素晴らしい「シラノ・ド・ベルジュラック」を大画面で見られて本当に良かった。

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