生誕百年記念 映画女優・原節子『東京の恋人(1952年 監督:千葉泰樹)』神保町シアター

生誕百年記念 映画女優・原節子『東京の恋人(1952年 監督:千葉泰樹)』神保町シアター
今回の企画「生誕百年記念 映画女優・原節子」の中で一番楽しみにしていた映画『東京の恋人』を拝見、監督の千葉泰樹さんは初めて知った方。楽しみにしていたのですがっ!映画の完成度としては今ひとつ、豪華な俳優陣にもかかわらず知名度が無いのも納得。こういう埋もれた映画がいっぱいあるんでしょうねー。とはいえ戦後7年目の銀座や勝鬨橋の風景など見所盛り沢山で、全く退屈することはありません。映画館の、大きい画面で見る価値のある映画です。

配役
ユキ:原節子
黒川:三船敏郎
ハルミ:杉葉子
正太郎:小泉博
忠吉:増淵一夫
大助:井上大助
赤澤:森繁久彌
鶴子夫人:清川虹子
小夏:藤間紫
宝山堂夫人:沢村貞子
宝山堂店主:十朱久雄

原節子さんと三船敏郎さん同じ歳の生まれなんですね、映画の公開時はお2人とも32歳、他に共演しているのは黒澤明の『白痴』くらい?最初のクレジットで2人の名前が横に並ぶだけで興奮します!そして勝鬨橋の開閉、何回も出てくるのですが、とても格好良く情緒的、指輪紛失や別れのシーンに効果的に使われています。舞台は銀座、並木通りの並木ビル、宝石屋の宝山堂、パチコン玉で大儲けしている赤澤工業が入っています。当時の銀座の風景が沢山見られるだけでも感無量。

赤澤の浮気相手、小料理お多福のママ小夏役の藤間紫さんがとても素敵、緩い役ですが、チャキチャキした早口、酒に乱れたシーンの中でも動作が美し過ぎる。パチコン玉をマシンガンのようにぶちまける赤澤妻役の清川虹子さんとの「デブ妻」とか「フーチャカピーのカスヅケ」などの罵声の掛け合いも楽しい。赤澤夫妻と小夏は、不幸な境遇のハルミに関わることなく、完全に笑いに徹しており好感が持てる良い役所。自宅の洗面所の排水口に落とした指輪を釣竿で釣ろうとしたら、魚が釣れちゃうシーンは一番笑いが起こってましたね。

内容としては「本物の指輪と偽物の指輪が入れ替わる話」と「杉洋子演じる病気のハルミの話」が軸となるのですが、どうもこの2つが上手く噛み合っていないよう。喜劇に本気の死の香りが漂うと笑うに笑えないのです。指輪のエピソードのみの完全コメディに終始して欲しかったな。ハルミが死の淵で苦しんいる時に、頑張って偽物の夫を演じている黒川を笑ったり、嫉妬するユキもいかがなものか。可愛いですけどね!タイトルの「東京の恋人」はハルミと黒岩のことかと想像されます。赤澤が隅田川に落ちた指輪(50万円→100万円→200万円と勝手に値が上がるのが笑える)を探すために雇った潜水夫は、さらさらやる気無く、最後は「欲望という名の船」に乗った鶴子夫人が潜水服を着て、川に飛び込む下げは良い。最後は川底のダイヤで「終」。

圧倒的に男前、何の気取りも無く蝶ネクタイを着こなす(乱れてても格好良い!)三船敏郎さんの『荒城の月』、チンピラとの喧嘩シーンも見所、ユキが描いた似顔絵も良かったですね。この映画では、原節子さんより他の出演者が目立っていた印象ですが、スケッチブックを脇に挟み、ポケットに右手を入れている原さん、ベレー帽を斜に被った原さん、暴れる鶴子夫人に動じず、赤澤の肖像画を描き続ける原さん、素敵です。淑女役が多いので、他の映画なかなか見られない素敵な原節子さんでした。堪能しました。本当にありがとう!神保町シアター!!

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