NODA・MAP第24回公演『フェイクスピア』東京芸術劇場プレイハウス

NODA・MAP第24回公演『フェイクスピア』東京芸術劇場プレイハウス
池袋、東京芸術劇場プレイハウスでNODA・MAP第24回公演『フェイクスピア』を拝見しました。超久しぶりの現代演劇、歌舞伎以外では初めての野田秀樹さん作・演出の舞台ということで非常に楽しみ。

作・演出:野田秀樹
出演:高橋一生、川平慈英、伊原剛志、前田敦子、村岡希美、白石加代子、野田秀樹、橋爪功

拝見して思ったのは、これって歌舞伎じゃないか!恐山、舞台を走る幕を使った舞台転換、言葉の選び方、渡り台詞っぽい部分とかもあるのですが、その設定が実に。ちょうど橋本治さんの『大江戸歌舞伎はこんなもの』を読んでいたのですが、歌舞伎の世界として生世話、世話、時代世話、時代、王代物などがあり、その行き来は自由自在。高橋一生さんの台詞から始まるのですが、歌舞伎で例えればそこから、時代→生世話→世話→王代→時代→世話→生世話そして夢と現実が縦横無尽で、その移動は非常に滑らか。野田地図の他の舞台を見ていないので比較はできませんが、令和歌舞伎と読んでもいいくらい。歌舞伎との親和性が良いのも納得です。

舞台は、タイトルのフェイクスピアはもちろん、性別年齢などが反転というか倒錯顛倒構造になっていて割と複雑、序盤はシェイクスピアの言葉を多用し、かなりスペクタクルな展開で笑いも多くコメディタッチですが、そこから、36年前の事故(幼少でしたので、記憶無し、こういう事があったなと知っている程度の知識でした)、自殺問題と身近な事象にもっていく展開が見事。星の王子さまが最初出てきた時は『真夏の世の夢』のパックかと思ったが「いちばんたいせつなことは、目に見えない​」という言葉を引き出すためか。目が見えない人には張り紙も見えないと思うのですが。ローゼンクランツとギルデンスターンとかハムレットの作品をちゃんと知ってたらもっと笑えたはず。実はプロメテウスが江戸っ子から「ひ」を盗んでいたというエピソードは爆笑。

出演者に関しては大倉孝二さんの休演は残念、伊原剛志さんと毛色が違うので大倉さん版で見てみたい。イタコ見習いの皆来アタイ役の白石加代子さんは映画では何度か見ているはずですが、記憶なく初めて認識、今後イタコと言えばこの顔を連想することでしょう。同級生という設定の橋爪功さんとのコンビがパワフルで素晴らしい。高橋一生さんも女性が憑依したり、一人エコーなどコミカルな演技も素敵、野田秀樹さんの演技は初めて見ましたが、身長も低くて、見た目がずるい。前に出るのも好きなんだろうなとは思いましたが、ちょっとクドかったかも(川平慈英さんがチョレギサラダに思えるくらい抜群にクドい!)。。。とはいえ、舞台は俳優のもの、と言いますが、カラス(コロス)やイタコの皆様も含め役者の熱量が凄かった!

客席は最前席までしっかり入れて満席、舞台もソーシャルディスタンスなど関係なく、コロナを忘れられる空間、座席も「とちり席」で最高でした。涙は出ませんでしたが、周囲はかなりの方が鼻をすすっており、こんな雰囲気の劇場は初めてで驚きました。題材はかなり攻めていて不謹慎と思えなくないですが、シンプルで前向きなメッセージが素敵。単純な言葉ほど、適切に伝われば深く刺さると思うのですが、流石は野田地図。しかしシェイクスピアを完全な振りに使ってしまう野田秀樹さん、恐るべし。最後まで無事公演できることを心より祈ります。人生楽しんで。素晴らしい。また別の公演も拝見したいです。

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