素浄瑠璃「全曲復曲完成記念『出世景清』第一部、第二部」紀尾井小ホール

全曲復曲完成記念『出世景清』第一部、第二部
紀尾井小ホールで全曲復曲完成記念『出世景清』を拝聴しました。2018年にルネッサ長門で人形付きで上演された公演の再演。その時カットされた部分が補填されています。チケット申し込み時、ちょっとしたトラブルもありましたが、貴重な機会に参加できてとてもよかったです。

「大序」竹本小住太夫、鶴澤燕二郎
「妙法蓮華経観世音菩薩 普門品第二十五は」から勢いよく始まり。解説によると景清は頼朝を討とうとして34回も失敗しているのがポイントだとか。

「東大寺の段」豊竹希太夫、鶴澤寛太郎
景清は、東大寺再興の現場に頰かむりして人足に変装し潜入。しかし7尺(=210cm)あるという設定ですからすぐにバレます!景清、めちゃくちゃ強いですが、随分抜けてるのでは・・・そりゃ34回失敗するよと納得させられるエピソードです。

「阿古屋住家の段」豊竹呂勢太夫、鶴澤燕三
「壇浦兜軍記」でお馴染み阿古屋が登場しますが、キャラが全く違います。清影が2人の子供と阿古屋と戯れる睦まじい情景があり、清水寺に出かけた清影と入れ替わりに兄の伊庭十蔵が登場。勲功のために清影を訴人しようと阿古屋に言いますが、断る阿古屋。そこにタイミング良くか悪くか小野の姫(景清妻)からの手紙が到着。それを見てぶちギレる阿古屋、「恨めしや腹立ちや口惜しや妬ましや」の激情。

「轟坊の段」豊竹希太夫、鶴澤寛太郎
新復曲部。江間小四郎と僧兵の戦闘場面。訴人したのが阿古屋と十蔵と知り、今度は清影がぶち切れる。首が胴に煮え込んだ二三太が可哀想です。

「大宮司捕縛の段」竹本小住太夫、鶴澤燕二郎
新復曲部。清影の行方を探るため、舅の熱田神宮大宮司は六波羅に連れていかれます。

「小野の姫道行」豊竹希太夫、竹本小住太夫、鶴澤清馗、鶴澤寛太郎、鶴澤燕二郎
新復曲部。ここから第二部。近松らしい言葉遊びが炸裂する華やかな段、藻尽くしがとにかく楽しい。最後に両眼を抉る景清から、みるめと見る目、目刺しなどの言葉が散りばめられます。

「六条河原の段」豊竹芳穂太夫、鶴澤清志郎
芳穂太夫さん熱演(一箇所おもいきり間違えてたけど)!キャラクターの演じ分けが素敵でした。六波羅に付いたけど速攻捕まった小野の姫の拷問シーンがえぐい。瀕死の状態ですが梶原源太に軽口を言う強さが凄い。小野の姫の方が、「壇浦兜軍記」の阿古屋のイメージに近いか。

「六波羅新牢から牢破りの段」豊竹睦太夫、竹澤宗助
捕まってとんでもない状態で牢屋に入れられている景清、そこへ子供を連れた阿古屋がやってくる。子供も殺して捨ててやる!というほど清影の恨みが凄い。何故にそこまで。。。子供にすがりつかれて涙を見せるものの「邪見の女が胎内より出でたるものと思えば、汝らまでが憎いぞ」と子供にまで言っちゃいますが、感情が大きく揺れる景清。結局許すことができず子供もろとも自害という悲劇に。その後、十蔵があらわれ侍畜生とののしられ、ぶち切れ。怪力で牢屋をぶち壊し十蔵を2つに裂いてしまう剛力。阿古屋が自害する所でうるっと来るかなと思ったのですが、ここで泣きそうになった。人形付きで見ていたらメッチャ面白いでしょう。

「観世音身替りより清水寺の段 」竹本三輪太夫、鶴澤燕三
頼朝の大きさを感じる段。最後糸が切れたようでしたが、燕三さんの三味線、左手で弾く音とか滅茶苦茶格好良い!景清の首が観音の御首に変じる不思議により、景清は宮崎日向を拝領し、三保谷との錣引きの場面を語り、最後は目をくり出します。終。

昨日まで国立劇場で文楽公演をされていたこともあり、練習不足な様子はありましたが、面白かった〜。事前に床本は読んでいたのですが、字で読むより節が付き、三味線がのる方が圧倒的に想像が膨らみます。景清、阿古屋、小野の姫、この三人が変な表現ですが、本当に人間的で描写が深い!舞台を想像しながら拝聴していたのですが、後半は絶対面白い!次回は是非人形付きで!東京公演じゃなくても見に行きます!鳥越文蔵さん、鶴澤燕三さん、近松門左衛門さん、ありがとうございます!

コメント

  1. […] 観賞 一.歌舞伎「九月大歌舞伎 第一部『お江戸みやげ』『須磨の写絵』」歌舞伎座 二.文楽「令和3年9月文楽公演 第二部『卅三間堂棟由来』『日高川入相花王』」国立劇場 三.歌舞伎「九月大歌舞伎 第三部『東海道四谷怪談』」歌舞伎座 四.文楽「令和3年9月文楽公演 第一部『寿式三番叟』『双蝶々曲輪日記』」国立劇場 五.歌舞伎「九月大歌舞伎 第二部『近江源氏先陣館 盛綱陣屋』『女伊達』」歌舞伎座 六.文楽「令和3年9月文楽公演 第三部『伊賀越道中双六』」国立劇場 七.能楽「田崎隆三・甫 二人の会 能『姨捨』/狂言『樋の酒』/能『枕慈童』」宝生能楽堂 八.素浄瑠璃「全曲復曲完成記念『出世景清』第一部、第二部」紀尾井小ホール […]

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