国立劇場 小劇場で開催中の文楽公演 第一部『仮名手本忠臣蔵』を拝見しました。第二部が1日だけ公演中止になったようですが、その後無事公演されたようで一安心です。お馴染み『仮名手本忠臣蔵』の六段目ですが、文楽でも歌舞伎でも見たことが無く初見。ただ今年10月に豊竹咲太夫師匠の素浄瑠璃で『勘平腹切の段』を拝聴しています。
配役
まずは、おかるの父与市兵衛が斧定九郎に殺される『二つ玉の段』から。文七の頭で超でっかい定九郎と武氏のかしらで小っさい与市兵衛の身長差が極端!これは敵うはずもありません。与市兵衛の同情を誘う長台詞では胡弓の伴奏。哀愁を増幅される役割があると想像されるのですが、同時に上手側では定九郎が地蔵を蹴り倒し、煙草を吸い始め、虫に足を喰われたりコミカルな動作が展開されます。最終的には谷底へ蹴り落とされる与市兵衛の哀れさがなかなか。下手から猪突猛進で飛び出してくる猪は思ったより小さい。ただ猪と格闘したことがある料理人によると猪は小さくても、非常に凶暴で危険だそう。ちょっと語りと人形の動きがちぐはぐな印象の初段でした。
続いて『身売りの段』、この段の主役はおかるかと思うのですが、人形の動かない演技って滅茶苦茶重要。人形とほんの僅かな動きでも気になるもの。無駄な動きが多いとどうしても気持ちがぶれますね。
最後は有名な『早野勘平腹切の段』、与市兵衛女房の婆は歌舞伎だと「おかや」という名前が付きますが、文楽ではな名無し。ただ感情の起伏が激しい非常に難しい役所。赤穂浪士の2人、年輩の原郷右衛門、若々しい千崎弥五郎の登場、勘平腹切、与市兵衛殺害の真相発覚、婆の嘆きなど見所が多い段ですが、まさかの睡魔が。。。眠りはしませんでしたが、頭がすっきりしない状態でした。腹切の場面では、バックに笛の音、「腹十文字に掻き切り、臓腑を掴んでしつかと押し」という詞章は何度聞いても凄まじい。「浮かむ涙の玉の緒も切れて」の後の「儚くなりにくり」は靖太夫さん、もの凄く力入ってましたね。素浄瑠璃でもそうでしたが、やっぱりお腹が痛くなる演目です。
令和3年2月文楽公演は3部制で1部が『五条橋』『伽羅先代萩』、2部が『曲輪文章 吉田屋の段』『菅原伝授手習鑑 寺子屋の段』、3部が『冥途の飛脚』。歌舞伎でもお馴染みの『伽羅先代萩』『吉田屋』が文楽ではどのような感じになるの興味津々。来年も楽しみにしております!
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