国立劇場 小劇場で令和4年5月文楽公演、第二部『競伊勢物語』を拝見しました。奈河亀輔作、1775年4月、初世中村歌右衛門らにより歌舞伎として初演され、その後浄瑠璃に移されたもの。
配役
まずは「玉水淵の段」から、この段は人形使いは全員黒子、奥の段の竹本織太夫さんの人物による声色の使い分けがお見事、終盤、道具替りで玉水淵になってからの人形の動きが面白く、ダイナミックに泳いで八咫の鏡を探す鉦の鐃八は、手ぬぐいを探そうとして蛇を掴んでしまったりコミカル、最終的には信夫が、片袖と引き換えに鏡を奪うことに成功。
休憩挟んで「春日村の段」、この物語、豆四郎と信夫が主役と思いきや、母小よしと紀有常が主役であることは人形使いの配役からも明らか。やはり和生さんや玉男さんが舞台に上がると雰囲気が締まる。緑の衣装に着替え、辛々帰宅した信夫は本当に顔が青く見える。お互い嫉妬ぶりが凄いラブラブな若い2人が面白いが、この後の展開を知っていると素直には楽しめない。竹本小住太夫さんは声が大きく、滑舌も明瞭で聞き取りやすくて良い。今年4月に「切場語り」に昇進した竹本千歳太夫は1時間以上語った?体全体を使った命を縮めそうな全力の語りが凄くて、母小よしの語りが素晴らしい。信夫が五つ衣に着替えてからの展開は涙なしでは見られない。玉男さんの有常の演技が素晴らしく、信夫の髪を直す場面でも悲しみが伝わってきて、琴の連れ弾きの時は完全に泣いている。ここは4年前の1771年に初演されている『妹背山婦女庭訓』のオマージュなのか?下手に女2人、上手に男2人、小よしと信夫を隔てる衝立と有常が竜尾を持って信夫と豆四郎の間を隔てた琴は吉野川か。斜めになった琴を引き続ける信夫の千々に乱れる感情、これは泣く。
惟喬親王と惟仁親王の御位争いとちょっと人間関係がわかりずらいですが、面白い演目、東京では35年ぶりの公演というのが驚きです。やっぱり文楽のカタルシスは最高です!
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