新春恒例、国立演芸場の「新春国立名人会」楽日にお伺いしました。
太神楽曲芸協会「寿獅子」
新春らしい獅子舞から、芸人(落語家)が演じることもあるのですが、お正月は専門家。やはり芸が違います。とても格調がある獅子で、お囃子もとても綺麗でした。1月7日とはいえ、グッとお正月気分が高まります。こんな獅子舞ちゃんに頭をはむはむされてみたかったなぁ。素晴らしい。
桃月庵白酒「ざるや」
インパクトのある名前はよくお見かけしていたのですが、落語を聞くのは初めて。「とうげつあんはくしゅ」と読むそうです。マクラの劇場の電気は自転車発電で、人間国宝(小三治師匠)も例外なく、漕いでおりますというのは面白い。よく言えましたね(まだ楽屋入りしてなかったのかも)。「する」という言葉が演技が悪いので酒のアテの「するめ」は「あたりめ」と言ったり、「髭を剃る」を「髭をあたる」と言うという話も勉強になりました。「ざるや」は聞く機会の多いわかりやすい落語、上げ上げの演技の良い演目です。ちょっと話は聞き取りにくかったですが、そう問題無し。外れのない演目です。下げは「私は旦那をかついでおります」
江戸家小猫「動物ものまね 」
平成30年度の国立演芸場「花形演芸大賞」大賞を受賞している方。初めて拝見しましたが、この方、最高!今日一番笑わせていただきました。これぞプロフェッショナルな演芸です。動物モノマネは鷹(クマタカ)、ウグイス、三本締めみたいに鳴くチワワ、東天紅鶏(日本の天然記念物で日本3大長鳴鶏)、オオサンショウウオ、フクロテナガザル、ネズミを披露していただきましたが、完成度高い。鳴き声を知らない動物も信じる心が大事です。モノマネを繋ぐ話術も面白い。ニワトリの鳴き方講座もあり、夜な夜な練習してしまいました。フクロテナガサルの鳴き声の最後は「両方のふくらはぎが一編に攣ったおじさん」の声、爆笑。
金原亭馬生「安兵衛狐」
最初「野ざらし」かと思ったら途中から狐の話へ。馬生師匠のお話、一言一句とても聞きやすいです(面白いかどうかは別問題だが)。終盤で正体がばれそうになった狐のおコンさんが、障子に隅で書く歌は「恋しくば たずねきてみよ 三崎(さんさき)村の うらみ葛の葉」、これの原案は保名だそう。
先月歌舞伎で拝見した『保名』のモデル安倍保名、白狐を助けた保名のもとに狐(葛の葉)が嫁入りに来るのは同じ(保名は狐と気付いていない)。二人は結婚し童子丸という子供をもうけますが、保名に狐であることが露見し、「恋しくば たずねきてみよ 和泉なる 信太の森の うらみ葛の葉」の一首を残し去っていくというお話。ちなみに童子丸が後の安倍晴明です。興味深い。 下げは「もどってコン!」
林家ぺー「余談漫談」
2度目のペー。最初になんか撒くのですが(前回はポケットティッシュだったか?)、今回はお正月ということで国立演芸場の御手富貴。自分から手を伸ばして取りに行ったりすることはありませんが、今日は膝の上に向こうから乗ってきた。初めての撒き物ゲットがペーというのは一生の記憶に残りました。有難うペーさん。最後は前回同様、松任谷由実の「ルージュの伝言」を熱唱して終了。
林家正蔵「一眼国」
マクラの料亭の懐石料理のような今日の寄席の中で、ペーさんはチキンラーメン。室蘭の鈴蘭は吉永さゆりの香りというのが笑える。落語はお馴染みの「一眼国」をそつなくこなします。下げは「早速、見世物へ出せ」
春風亭一朝「芝居の喧嘩」
歌舞伎でもお馴染み『極付幡随長兵衛』の除幕に似た落語。講談が元ですが、落語になっても講談っぽい(演者によるのか)。
題名の通り立ち回りの多い場面ですが、どぎつくなく軽妙な語り口。人の良さを感じました。この方、笛の名手で奥様は歌舞伎役者、5代目片岡市蔵の娘さんだそう。納得。
柳家小さん「つぼ算」
こちらもお馴染みの演目、このお話は面白い擽りが沢山あるので、時間が短いと面白さ半減。淡々とした正確な語り口。下げは「いただいた2円、これもお返しいたします」
林家正楽「紙切り」
ほのぼのほっこりの紙切り大好き。リクエストに答え切っていくのですが、やはりネズミが多く羽子板を付く女の子、福ねずみ(大黒とねずみ)、ねずみの親子、窮鼠猫を噛む、ねずみと門松、令和二年の6作品。紙切り中のお囃子もねずみと親子ではチューチュートレイン、窮鼠猫を噛むではトムとジェリーなどユーモアたっぷり。作品としては「ねずみと門松」が凄かった。無茶なオーダーかと思ったのですがシルエットで門松を表す名人芸!素晴らしい。
柳家小三治「公園の手品師」
もう出てきただけで会場の雰囲気が変わる。講座を通り過ぎて、下手に飾ってあった正月飾りをいじるだけも、何やら凄いムード。昨年末に放送されたNHK交響楽団のベートーベン『第九』の話から、初めて買ったLPがベートーベン『運命』とチャイコフスキー『未完成交響曲』だったという話など。何でも初めて女性指揮者(オーストラリアの指揮者シモーネ・ヤング)だったそうで、最初は優しい演奏がぬるま湯のようで気に入らなかったが、最後は心地よくなり涙していたというユーモアを交えた素敵な話。小三治師匠ご自身も「面白いことやったことないんですよ」とおっしゃっていましたが、確かに内容からしたら普通のこと話しているだけなのですが、不思議と笑いが起こるのは何?呼吸、抑揚、間の取り方、名人芸です。終戦後に入学した小学校で校歌がなく、第九の中の『喜びの歌(歓喜の歌)』を毎朝歌わされていたというのも興味深い。最後は親友だったフランク永井さんの「公園の手品師」という歌を歌って幕。あまりヒットしなかったのですが、お2人が1番好きな歌だったということ。私は存じ上げませんがフランク永井さんへの愛情を感じる優しい歌声でした。落語じゃなかったのは残念でしたが、正月から小三治師匠を拝めたことに感謝です。
そして毎年恒例2月の金原亭馬生師匠の鹿芝居、演目は歌舞伎の『与話情浮名横櫛-源氏店-』、特別ゲストは歌舞伎俳優の大谷友右衛門さん!速攻チケットいただきました。2月歌舞伎、文楽、素浄瑠璃、寄席と盛り沢山で楽しみです!
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[…] 観賞 一.寄席「新春国立名人会 楽日」国立演芸場 二.歌舞伎「壽初春大歌舞伎 夜の部」歌舞伎座 三.歌舞伎「初春歌舞伎公演 昼の部」新橋演舞場 四.歌舞伎「浅草新春歌舞伎 第2部 […]