市川猿之助奮闘歌舞伎公演 夜の部『御贔屓繫馬』『蜘蛛の絲宿直噺』明治座

市川猿之助奮闘歌舞伎公演 夜の部『御贔屓繫馬』明治座
明治座で「市川猿之助奮闘歌舞伎公演 夜の部」、代演2日目を拝見しました。一本目は『御贔屓繫馬(ごひいきつなぎうま)』、四世鶴屋南北原作、昭和59年4月に明治座で初演された明治座所縁の演目だそう。

配役
相馬太郎良門:中村隼人(萬屋)
桔梗の前:中村米吉(播磨屋)
滝夜叉姫:市川男寅(滝野屋)
御厨正頼:中村福之助(成駒屋)
台屋の四郎次:中村歌之助(成駒屋)
百足のお百:市川團子(澤瀉屋)
石蜘法印:市川青虎(澤瀉屋)
仲居お万:市川寿猿(澤瀉屋)
熊手のお爪:下村青
猪熊入道:嘉島典俊
伊賀寿太郎:市川猿弥(澤瀉屋)
源仲光:市川門之助(滝野屋)

平将門の息子、相馬太郎良門の復活場面から、発光赤髑髏にぶすぶすと火の粉がくすぶる衣装が格好良い、市原野のだんまりの場面では急に桔梗の前と伊賀寿太郎が出てきてついていけませんでしたが、なかなか良い雰囲気。序幕の宙乗りのインパクト、しっかり意味が感じられるも良い。二幕目から話が急展開、実は武士の台屋の四郎次役の歌之助君の気っ風の良さが素敵、團子君の女方も思いの他良くてびっくり。こうなると昼の部ももう一度見てみたい。桔梗の前は、乞食の菰垂れの安という人物に身をやつしており、実は良門ではないかという噂が。難しいお役ですが、ナウシカ、オンディーヌ、FFXなど色々素晴らしい経験をして演技もうまくなっている印象。新作や現代劇の経験が糧となっているのか。しかし金冠で酒を飲むのは機能的に、衛生的にどうでしょう。寿猿さんもお元気そうで何よりです。良門は座頭座頭猿島哥遊に化け、藤原純友の残党、伊賀寿太郎は鬼門の鬼兵衛に化け、百足のお百も最後に田原藤太娘千晴ということが判明するなど背景が複雑過ぎる。良門もただの悪党という訳ではなく皆んなに好かれる好人物なのでしょう、隼人君のニンにぴったりのお役かも。終盤の激しい立廻りも格好良い。最後もとても華やかに決まりましたが、舞台の方々の思いを考えると、胸が詰まる舞台でした。

二本目は楽しい大喜利所作事『蜘蛛の絲宿直噺』です。

配役
女童熨斗美/小姓澤瀉/番新八重里/太鼓持彦平/傾城薄雲実は土蜘蛛の精:中村隼人(萬屋)
平井保昌:市川猿弥(澤瀉屋)
坂田金時:市川青虎(澤瀉屋)
碓井貞光:中村福之助(成駒屋)
卜部季武:中村歌之助(成駒屋)
金時女房八重菊:市川笑三郎(澤瀉屋)
貞光女房桐の谷:市川笑也(澤瀉屋)
渡辺綱:市川中車(澤瀉屋)
源頼光:市川門之助(滝野屋)

歌舞伎座で上演された時より、大薩摩が入り、葛城山へと舞台が変わるなど後半のみ演出が異なる。猿之助さんと比べてしまうと、流石につらいものがありますが、隼人君の珍しい女方にはニヤニヤ、とにかく必死こいて頑張っているのは伝わってくる。終盤に登場の猿弥さんの勢いは凄く良いし、なんか救われる。最後は笑三郎さん、笑也さんも登場して欲しかったなぁ。なんやかんや思うところはありながらも、歌舞伎ファンとしては応援し、舞台を見続けるしかない。そしてもし、猿之助さんがまた舞台に立つ日が来るとしたら大歓迎です。

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