東京芸術劇場 シアターイーストで「リビングルームのメタモルフォーシス」を拝見しました。
作・演出:岡田利規
作曲:藤倉大
出演:青柳いづみ、朝倉千恵子、川崎麻里子、椎橋綾那、矢澤誠、渡邊まな実
演奏:アンサンブル・ノマド
新しい音楽劇は、どうしても比率が演劇に置かれる音楽劇で音楽の比重を高めたとのこと。楽隊が一番手前、舞台の奥で役者たちが演じますが、この並び自体に疑問を感じる。椎橋綾那さんの不思議な台詞から始まりますが、人間的なものが無化されといくのを描く、全てが不思議で非現実的な舞台でした。家長らしき唯一の男性、毛布を雨に濡らしてしまう女性、大家からの退去通告に抵抗する女性、その電話を受けた女性は、普段からざわざわと感じているが、このざわざわは人間的なもののよう。そして椎橋綾那さん演じる女性と途中から登場する黒いドロドロ(雨?)にまみれた女性は共感覚のよう。ただ同じ家に住んでいる他人を家族という男、その男を嫌いという女性たち、同調圧力、無個性化、窓や鏡の消える境界。膨らむ三角錐と立方体、円柱と毛むくじゃらな何かを被った家主と仲介業者。バランスボールに乗った毛むくじゃらなもの。ナウシカの「虚無」が連想される。
リビングルームと人間性が崩壊するという内容は単純なようで難解、分かったようで分からず、舞台の配置を変えたところで、音楽の演奏会よりも演劇要素が強いことは否めない。そもそも音楽劇の音楽の比率などと考える時点でどうなのかと思いますが、それについて考えさせるという意味では成功しているのかもしれず、なかなか新鮮で不思議な演劇体験でした。
コメント