令和7年初春歌舞伎公演『彦山権現誓助剣』新国立劇場 中劇場

新国立劇場 中劇場で令和7年初春歌舞伎公演『彦山権現誓助剣』千穐楽を拝見しました。

配役
毛谷村六助:尾上菊之助(音羽屋)
京極内匠:坂東彦三郎(音羽屋)
一味斎姉娘お園:中村時蔵(萬屋)
若党友平/立浪家家臣 十時伝五:中村萬太郎(萬屋)
立浪家家臣 向山三平:市村竹松(橘屋)
立浪家家臣 捨川団八:市村光(橘屋)
真柴方の若武者:坂東亀三郎(音羽屋)
真柴方の若武者:尾上丑之助(音羽屋)
真柴方の若武者:尾上眞秀(音羽屋)
真柴方の若武者:中村梅枝(萬屋)
真柴方の若武者:中村種太郎(播磨屋)
一味斎孫弥三松:中村秀乃介(播磨屋)
一味斎妹娘お菊/立浪家家臣 井村六郎:上村吉太朗(美吉屋)
若党佐五平:市村橘太郎(橘屋)
一味斎妻お幸:上村吉弥(美吉屋)
早川一学/杣斧右衛門:片岡亀蔵(松島屋)
衣川弥三左衛門:河原崎権十郎(山崎屋)
老女福栄:市村萬次郎(橘屋)
吉岡一味斎/明智光秀の亡霊:中村又五郎(播磨屋)
立浪主膳正:坂東楽善(大和屋)
真柴大領久吉:尾上菊五郎(音羽屋)

ほとんど上演されない場も演じられる通し狂言、「豊前国彦山権現山中の場」、六助はさらりと上手から登場、八重垣流の奥義の一巻を授けるために、何故こんな手の込んだことするのか不思議。簡単に騙される六助はずっと良い人。「周防国太守郡家城外の場」、京極内匠に鉄砲で打たれているのに互角なのは一味斎が強いのか、京極内匠が弱いのか。「長門国吉岡一味斎屋敷の場」は、一部爆睡。河原崎権十郎さんの寛容な芝居がとても良い。そして衣川弥三左衛門に対して、とても体が大きく見えるお園の益荒男ぶり。「山城国小栗栖瓢箪棚の場」、夕顔棚ならぬ瓢箪棚、最初のギリギリダンス?は元ネタがわからない。付いていながらお菊を殺されてしまった友平、死ななくてもいいのにと思うのは考え方の違いか。ほとばしる池の水の表現が愉快。明智光秀が奪った剣の名前は「蛙丸」、お園が持っている久吉所縁の「千鳥の香炉」、お園が鎖鎌で戦うのに驚く。「豊前国彦山杉坂墓所の場」はどう見ても親切で主思いの佐五平、市村橘太郎さんが死んじゃうのは悲しい。前半も筋がよくわかって良いですが、断然「毛谷村六助住家の場」が面白い。吉弥さんのお幸の飄々としながらも強い意志、翻弄される人の良い六助、仇ではなく許嫁と分かり豹変するお園の可愛さ、皆様、とても上手くてちゃんとしている。お園のクドキとそれに絡む尾上音幸さんの直方源八のやり取りも緊迫した場面ながら、のんびりしていて好き。それまでが素晴らしいので、最後の六助の怒りの場面はグッと来る。石をめり込ませるためだけに大掛かりな舞台を用意する大道具さんの仕事振りにも感動です。「豊前国小倉真柴大領久吉本陣の場」、菊五郎さんのお声の良さと存在感、元気いっぱいな子供達の武者ぶりはニヤニヤせずにはいられない。京極内匠は終始弱く、倒れた形のまま運ばれていく姿は情けなさ倍増ですが、最後の大人数による、国立劇場贔屓なおめでたい渡り台詞も心が明るくなります。千穐楽ならではの盛んな大向こう、役者の気合いも伝わる素敵な舞台を1月の終わりに拝見できた嬉しい。国立歌舞伎の通し上演、今後も期待しております。

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