浪曲「第6回富士綾那独演会」アートスペース兜座

アートスペース兜座で「第6回富士綾那独演会」を拝見しました。第四回、第五回を欠席しておりましたので、久しぶりの兜座ですが、会場内が改装されており、快適になっていました。

「権太栗毛」富士綾那、曲師:沢村博喜
ネタおろし。今回お声がとても調子良い感じ。福島県の三春の馬市、こんなに良い栗毛なのに売れないとぼやく馬飼の源兵衛、その値は四百貫目。そこへ現れた若者が馬をベタ褒めし、二百四十貫分の砂金で売ってくれと頼む。残りは後で払うからと馬を無理に連れて行こうとしたため、馬市の仲間にボコボコにされて瀕死の若者。実は若者は熊谷次郎直実の馬丁で、誤って殺してしまった馬の代わりの名馬を必死に探している最中だったという。その心意気を聞き、馬をやるという源兵衛。期限が迫る中、三春から熊谷まで移動する部分は、テンポの良い三味線に、心地よい節、馬に乗り必死に駆ける権太が頭に浮かぶ。はや出陣という中、息も絶え絶え、なんとか間に合った権太、熊谷は涙を流し、その馬を権太栗毛と名付けたという話。綾那さんの馬に寄り添う所作、伸びやかで良いお声がとても素敵。良い浪曲は場面が容易に想像されます。内容も非常にわかりやすい演目、歌舞伎でもお馴染みの熊谷直実が登場する浪曲は心地よい感動がありました。

「相馬大作 神宮寺川の渡し」富士綾那、曲師:沢村博喜
初めて拝聴する演目、津軽藩に遺恨を持つ南部藩の相馬大作(事件)を知らなかったため、やや付いていきにくい内容。うまく神宮寺川の船乗りとして雇われた相馬大作こと新助、船頭頭の徳兵衛も南部藩出身で相馬大作を慕っている好人物。江戸で殺害した津軽藩主に続き、ここで二代目藩主も殺害しようと企んでいる。終盤の神宮寺川の船上での仇討ちの場面は臨場感たっぷりですが、良い所で噛んでしまったのもご愛嬌。最後は藩主を川に引き摺り込み本懐をとげる。史実とは随分違うようですが講談でも聞いてみたい。

アフタートークは港家小そめさんも舞台に上がり、上映されていたのは全く知らなかった映画『絶唱浪曲ストーリー』のDVD発売記念の告知など。ホラー映画『スマイル』をアレンジしたチラシは浪曲協会内でも不評だったそうですが、次回も楽しみにしております。今日は今までで拝聴した中で一番耳に心地良かったかもしれません。

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