「第二回 古典芸能を未来へ~至高の芸と継承者~」国立劇場 小劇場 8Kライブビューイング

これは凄い超絶企画!!人間国宝、国宝級の方ばっかり。是非S席で拝見したかっのですが、あぜくら会先行予約で4時間ほど電話をかけ続けるも、繋がった時には完売。。。出演者も大勢なので、ご関係者でほとんど終わりなんでしょうなぁ。ぐすん。そんな訳でお隣小劇場の8Kライブビューイング(以下LV)にて鑑賞でした。LVは初めてで、どれくらいの画面なのか気になっていたのですが、映画館レベル。5列目でしたが、ちょっと首が。もう少し後ろの席がベスト。チケットを取る際に1列目と5列目を選択できたのですが、1列目にしなくて本当によかったわ。今回の公演はチラシの通り囃子を中心とした会です。

1.狂言と歌舞伎による 三響會版 「三番叟」
三番叟:野村萬斎
三番叟:市川海老蔵
大鼓:亀井広忠
小鼓:田中傳左衛門、田中傳次郎

最初からゴージャス!三番叟の前に亀井忠雄さんが大鼓で登場。野村万作さんが登場する時なんかに感じるのですが名人は会場の空気を一転させるというか包み込むというか、寛大の極致です。前半の「揉之段」、最初に萬斎、後で白塗りの海老蔵が舞いました。こういったアクティブな演目は萬斎さん素晴らしいです。「おおさえ、喜びありや」の掛け声も腹の底から出ておりでっかい。続いて海老蔵、力強く安定感のある萬斎と比べ、軽妙で洒落た足運び。笛も能楽笛方藤田流の竹市学さんから田中傳十郎さんへ変わり、リズムも変調。能と歌舞伎の違いがよくわかり興味深し。後半は「鈴之段」、萬斎と海老蔵が中央の三方に置かれた2つの神楽鈴を両サイドから同時に手に取る所なんか緊張感もあり鼻血出そう。神様のための能と大衆のための歌舞伎、そんな違いもよく出ていました。優劣を付けるなんて絶対に間違っている。同時に舞う場面も多く、見応えのある一幕。自分の見たいように見れないもどかしさはありますが、それでも最高。鼓を演奏する三兄弟の演奏も素晴らしく、いやはや目出度し。

幕が降りると、画面前にいきなり解説の方が登場してびっくり!なんだこの陽気な親父と思ったら葛西聖司さん?ですよね。事前情報に載っていなかったので、得した気分。この方、本当楽しそうに喋りますね。

2.田中流三代による 長唄素演奏「西王母」
小鼓:田中佐太郎、田中傳左衛門
大鼓:亀井忠昭
太鼓:田中傳次郎、、亀井太一

長唄の西王母には2種類あり、今回は「国豊の西王母」と呼ばれるそう。天保12年(1841)に中村座で尾上多見蔵が踊った『八重九重花姿絵』の中の一つであることから「多見蔵西王母」とも。三兄弟のお母様である田中佐太郎さんが今回どうしても演奏したかった曲だそう。例により唄の歌詞は全く聞き取れませんが、家族の共演ということもあり緊張感がありながらも何だか優しさや楽しさも感じられます。5.1chサラウンドで音の立体感はありますが、やっぱり生で聞きたいものです。田中傳左衛門さんと息子の亀井忠昭君(5年生)の顔が同じ!芸以外もしっかり継承されています。佐太郎さんは凛とした杜若のような美しさ、3兄弟を育て上げてこの方が実は一番凄いのでは。桃食べたいです。

3.半能「野宮」
シテ(六条御息所の亡霊):観世清和
ワキ(旅の僧):宝生欣哉
地譜頭:観世銕之丞
大鼓:亀井忠雄
小鼓:大倉源次郎

お能好きには堪らない豪華共演!能舞台もちゃんと設営されていました。そういえば昨年9月の国立能楽堂開場35周年公演で拝見した「井筒」もシテ、大鼓、小鼓は今回のお三方の共演でしたね。シテは『源氏物語』の六条御息所、「葵」と「賢木」の巻を合わせた作者不明の創作で、舞台は秋の嵯峨野の野の宮(伊勢斎宮の精進潔斎場)。ちょうど『源氏物語(瀬戸内寂聴翻訳版)』を読み返しており(お手洗いで拝読しておりますので牛歩)、「賢木」を読んだばかりでしたので、かなり熱い曲目。「葵上」のためとても怖いイメージの御息所ですが、前東宮の妃でありながら、数年で死別してしまい、その後は光源氏の愛人にという複雑な事情のある方。物語内でも神経質でプライドの高い様子がかなり描かれますし、亡くなった後も化けて出るほど執念深いですが、唄や着こなしのセンスも素晴らしい知的でやんごとなき女性です。複雑の思いを抱きながら舞う姿が愛執の美しさ。面は能面作家の越前出目家の増女でなんと500年ほど前のもの。葵の上との車争いを語る時、光源氏の野の宮訪れを語る時、思いを込めて舞う時と本当に表情が変わってゾクゾクする!この感覚が堪んないす。お能は囃子が素晴らしいと、舞台が締まりが全然違いますね。源次郎さんも忠雄さんも大好き!私も火宅の門から連れ出して欲しいものです。

4.長唄素演奏「勧進帳」
田中流一門総出演、20人以上!壮観で楽器を持って並ぶだけでも大迫力。例によって何て唄ってるか聞き取れないですが、流石になんとかなんとなくは分かります。分からない場合は感じるしかありません。とてもリズミカルで途中に台詞が入ったり、歌舞伎の場合は役者に集中するので、全く違う感覚。この大人数で合図が何もないのにぴったり揃うのが本当凄い。来月の歌舞伎座の勧進帳(片岡仁左衛門の方です)がより楽しめそう!

5.舞踊「老松
立方:坂東玉三郎
小鼓:田中傳左衛門、田中傳次郎
太鼓:田中佐太郎
三味線:杵屋勝国

松尽くしのお目出度い唄。一説には四代目杵屋六三郎が、母親ますの80歳の祝いに作詞作曲したとか。三部に別れており、君が代の「千代に八千代に〜」「長生の泉」「高砂」など長寿を寿ぐ唄から入りますが、中盤に神舞、終盤には松の太夫(太夫=松の位=遊女の最高位、位秦の始皇帝の松に大夫の位を授けた故事から)も登場し、江戸時代らしい遊郭の艶やかな雰囲気も登場するなど抑揚と変化に富んだ楽しい曲。玉三郎は昨日まで歌舞伎座に出演されていたこもあり、ちょっと体調が心配でした(余計なお世話!)が、場面場面を踊り分けて流石のお美しさ。扇にまで血が通っているよう。舞踏がこの方の真骨頂と感じます。しかし玉三郎さんの舞踏は3Dで、そしてなるべく近くで拝見したいものです。

6.能と歌舞伎による 三響會版「石橋」
シテ(獅子):片山九郎右衛門、観世喜正
仔獅子:市川海老蔵
地謡:梅若紀彰
小鼓:田中傳左衛門
太鼓:田中傳次郎
大鼓:亀井広忠

チラシでは「獅子」となっていましたが「石橋」に変更されていました。お能に近い曲になるのかと思ったら、海老蔵の独断場!いきなり獅子が登場するところから始まる短縮バージョン、親獅子(白頭)2人が青いカプセル(清涼山?)がぱっかり割れて登場する歌舞伎っぽい演出。小獅子(赤頭)は花道七三まで来て、後ろ向きに引っ込む派手な出。毛振りもいつもより余計に回っております。11年振りの小獅子は滅茶元気(親より体大きいし)。最後は見栄を切って華々しく終了。能は歌舞伎に比べ地味なので、こんな感じになっちゃいますかね。今年2月に国立能楽堂で拝見した「石橋」は素晴らしかったのだが。とはいえ最初と最後に登場の海老蔵さんの華やかさは超一流でかけがえのない日にふさわしい一幕でございました。

壁をはさんですぐ隣で実際に演じられいると思うと悔しいやら嬉しいやら。来年はどなたが出演されるかわかりませんが、是非大劇場で、できればS席前方で見てみたいものです。こんな豪華共演は滅多にあるものでもなく、本当貴重な機会、映像とはいえライブで見られて最高でした!!

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