平安時代という古典好きにはグッとくるテーマ、前回感動した小宮山せりなさん出演ということで今回の公演はマストな浅草ロック座で「HEIAN 1st season」1回目公演、2回目公演を続けて拝見、想定を上回る素晴らしさでした。
1景「平安京」ALLIY(矢沢ようこ、小宮山せりな、茉宮なぎ、白橋りほ、ダンサー2名)
ALLIYさんとダンサーは烏帽子を被った男性、市女笠に虫の垂れ衣姿の女性4人、ALLIYさんはシルバーの狩衣風の衣装。矢沢ようこさんがいると宝塚感が強くなる。男前で、すけこましな雰囲気から在原業平かと思ったら藤原道真でした。BGMもレキシの『Let’s FUJIWARA』だし、女性陣は娘だったのか。日本的な弧を描く赤い橋のセットの前で富士山の形で決まる。後半は水色の振袖風ラメドレス。
2景「崇徳院」樋口みつは(ダンサー2名)
讃岐に流された崇徳院の怨霊伝説から。自分の血で経を書いている崇徳院。白頭のダンサーは怒りと恨みが具現化したものでしょうか。天狗というかカラスの化け物になってしまった崇徳院。ハードロック調のBGM、ストロボを使う演出は初めて見ました。後半はボロボロになった黒いケープ状の衣装で、羽根を抜き、抱きしめ、落とす姿に崇徳院の深い悲しみを感じる。スポット照明が抜群に格好良い。後半は正に浄化。きっと崇徳院も救われたはず。前回拝見した時はギャル風な樋口みつはさんでしたが、全く違う雰囲気と格好良さに驚く。
3景「とりかえばや物語」白橋りほ(橋下まこ)
快活で男性的な性格の女の子が白橋りほさん、内気で女性的な性格の男の子が橋下まこさん、、原作ではお父さんの意思で取り替えるのだが、自分たちの意思で取り替えた様子。舞台に置かれた衣桁に掛けられた薔薇?の柄の萌葱色の打掛の後ろで、最初、白橋さんが着ていた赤い衣装と、橋下さんが着ていた緑の衣装を交換する。背が小さく膨よかな白橋さんと背の高くスリムな橋下さん、緑と赤の衣装の補色のコントラストが鮮やか。きゃりーぱみゅぱみゅの「つけまつける」の歌詞に合わせたダンスが可愛く3景らしいコミカルで盛り上がる一幕。後半はアルミっぽい質感のメタリックシルバーの短ジャケットとスカートで、予想外にキレのあるパワフルなダンスが素敵。早速Kindleで田辺聖子訳の『とりかえばや物語』を購入しました。
4景「祇王」矢沢ようこ(ALLIY、ダンサー4名)
平家物語よりも能の『祇王』がベースでしょうか。矢沢ようこさんが祇王、ALLIYさんが仏御前。白拍子は男装で舞うのでこの2人は必然でしょう。踊りや衣装は洋風で、前半はフラメンコっぽい感じのある幻想的な雰囲気。後半は白いローブのような衣装で出家した後のイメージか。
5景「ちはやふる」茉宮なぎ(橋下まこ、小宮山せりな、樋口みつは、白橋りほ)
紫式部(茉宮なぎ)、清少納言(白橋りほ)、小野小町(橋下まこ)、崇徳院(樋口みつは)、西行法師(小宮山せりな)の六歌仙ならぬ浅草ロック座五歌仙。ジュリアナ小町、拝み倒す振り付けの西行法師のこみせりさんがチャーミング、そして終盤も百人一首で勝てないのでズルしちゃう西行法師がとにかくチャーミングで、手裏剣ダンスも可愛い。紫式部と清少納言は仲良しで、ちはやふるの実写映画の「フラッシュ」、アニメの「そしていま」、星野源の「アイデア」の日本語歌詞の流れも素敵。紫式部だけに紫の衣装で弾ける茉宮なぎさんの明瞭さと快活な踊りが良い。
6景「羅城門」小宮山せりな
『今昔物語集』の「羅城門登上層見死人盗人語第十八」、それを元にした芥川龍之介の『羅生門』より。知らないバンドでしたがヴァンピリアの「my beautiful twisted nightmares in aurora rainbow darkness」(この手の歌は全部コトリンゴに聞こえる)と設定だけで泣きそうになる。先程の西行法師とは変わって極シリアスな雰囲気。1回目公演は上から下がったシルクを手に花道を走る小宮山せりなさんに泣く。エアリアル・シルクは、音楽とのタイミングが合わず最後の方が無音になってしまいましたが、2回目はほぼ完璧な感じ。上手側から見た方が照明が綺麗かも。回転と共に飛び散る汗の輝きが美し過ぎて、上を向いているのに涙が流れ、心も洗われるよう。最後のドキッとさせる落ち技も凄い!!童顔と肉体美、エアリエルのギャップに心を鷲掴み。4回拝見してますが、全泣き記録更新中。
7景「壇ノ浦」橋下まこ(矢沢ようこ、ALLIY、樋口みつは、茉宮なぎ、ダンサー4名)
歌舞伎の『渡海屋(碇知盛)』でも馴染み深い平知盛。照明が付くと花道にすわと立つ橋下まこさんの凛々しさよ。知盛は刀ではなく絶対薙刀、舞台には風になびく平家の赤旗、源氏の白旗、前半は壇ノ浦の戦いの様子を描く、知盛が後ろから抱きしめていたのは安徳天皇のイメージか。ガニ股ダンスも好きだわ。赤いラメドレスを縄が付いた可愛らしい碇で結ぶ。移動盆から盆への移動、盆が下降するという入水の表現も興味深い。「奢れる人も久からず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者も遂にはほろびぬ、ひとえに風の前の塵におなじ」の通り、通常は知盛の死で終わるのだが、知盛リボーン!その復活、転生を表現しているのが素晴らしい。鼓動と飛び立つのに必要な羽根の描写は平氏の家紋である揚羽蝶、再生を表現するのにヌードほど直接的で的を射た表現は無い。手足の爪のマニュキアの赤の統一感、豊かな表情と表現力、美しいプロポーションとしなやかさ、華やかな佇まいに圧倒されました。
フィナーレ「田楽」
最後は楽しい楽しい群舞にて。橋下まこさんが、矢沢ようこさんを前に押し出す演出の意味は何だっただろう。それはともかく古典好きには堪らない公演、全景構成が抜群、浄化、再生や復活を感じる景が多く、ポジティブな全肯定感が素晴らしかった!浅草ロック座最高です!
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