2月定例公演 狂言『千鳥』/能『隅田川』国立能楽堂

国立能楽堂で今年初の能と狂言、「月刊特集・絵巻物と能、2月定例公演」狂言『千鳥』/能『隅田川』を拝見しました。

配役

狂言『千鳥(ちどり)茂山七五三(大蔵流)
今までのツケを払っていないにも関わらず、太郎冠者に酒を買いに行かせる主人が、なかなか酷い演目。津島祭りの話を聞きたい酒屋、酒樽を千鳥、山鉾の山に見立てて持って帰ろうとするも失敗、見つかった時に「はぁ?」としらばくれる茂山千五郎さんの腹立つ顔が最高。最後は流鏑馬、竹杖を馬に見立てて駆け回る太郎冠者、話が面白かったら支払いは後でいいと言われたにもかかわらず、どさくさに紛れてまんまと酒樽を持って逃亡。酒屋の「南無三宝!またやられた!」の一言も、何回もやられていると想像すると面白い。

能『隅田川 (すみだがわ)塩津哲生(喜多流)
『隅田川』はポピュラーな演目のようですが、初めて拝見。謡も会話のようで非常にわかりやすく、現代劇にも通ずるドラマティックさが最高。先月で80歳というシテの塩津哲生さんの狂女が凄い。年齢のためなのか、狙ってなのか不明ですが、ふるふる震えるスローな優雅で不気味な動きが狂女にしか見えず、さらに頭に被った傘でできる影がまた不気味。「物狂いを見せろ」という渡守は残酷に思え、在原業平の「名にしおはば いざ言問はむ 都鳥 わが思ふ人は ありやなしやと」も解さない渡守ですが、後に見せる朴訥な優しさが堪りません。船内で大念仏の理由を聞き、息子が死んだとわかり慟哭する女性、ガクッと2度膝を付く姿がとても哀れです。大勢から唱えられる念仏、塚の中から聞こえる子供の念仏、さらに現れた息子に触れようとしても触れられないなんて、悲し過ぎる。一噌隆之さんの笛の音も心に沁み、能面なのに完全に流れる涙が見えて、こちらも貰い泣きせずにはいられない。子方を出さない演出もあるそうですが、出た方がカタルシスは感じられる。ただ、声だけというのも有りかも。ちょっとして角度により表情が変わって見える「曲見」、最後の余韻も素晴らしかった。

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